ショックバイタルって何?|ショックの種類や症状、5兆候について

ショックの種類と初期対応 お勉強

ショックと聞くと、さまざまな種類のショックが思い浮かびますよね。
名前は聞いたことがあっても、具体的に何が原因で、どんな症状が現れ、どのような治療が必要なのか・・・・
考え始めると、混乱してしまうこともあるかもしれません。

手術室で働いていると、リーダー看護師から、
「急患、ショックバイタルだよ。急いで準備して。」
と言われたりしませんか??

この記事では、ショックについての理解を深めるための手助けができればと思います。

ショックの定義と進行過程

ショックとは・・・
血液循環胃何らかの障害が起きて、体内の臓器や組織に十分な血液が供給されない状態のことを言います。
(=急激な全身性末梢循環不全)

ショックは代償期非代償期に分けられ、加速度的に進行していく。
そのため代償期の間にショックを認識し、治療を開始しなければなりません。

代償反応のメカニズム

代償反応とは、体が恒常性を保とうとするために、起こる反応のことです。

ショックの代償反応とは・・・
脳や心臓などの重要臓器への血流を維持するために起こる反応

・内分泌系
・交感神経系


この2つが大きく関与しています。

この代償反応によって、初期のショック状態では、血圧が維持されていることがある。

ショックの種類(分類)と原因

ショックは以下の4つに分類されます。

  • 循環血液量減少性ショック
  • 血液分布異常性ショック
  • 心外閉塞・拘束性ショック
  • 心原性ショック

それでは一つ一つ詳しくみていきましょう。

循環血液量減少性ショック

循環血液量減少性ショックとは
「前負荷」の破綻
=出血や脱水などによって、循環血液量が減少し、心臓に流入する血液量が少なくなること。

循環血液量減少性ショックが進行して起こる反応
代謝性アシドーシス(PH<7.20)
⇒組織の低酸素状態と乳酸の蓄積、酸の生成などによる

低体温(34℃以下
⇒末梢血管の収縮、血液の減少、代謝の低下などによる

凝固障害(APTT>60秒orPT-INR>2.0)
⇒凝固因子の不足、低体温、DICなどによる

循環血液量減少性ショックの原因

循環血液量減少性ショックを引き起こす病態

  • 大量の出血(外傷、大量の吐下血、大動脈瘤破裂など)
  • 高度の脱水
  • 広範囲の熱傷
    これらによる循環血液量の減少

循環血液量減少性ショックの症状

循環血液量減少に伴い、起こる症状

  • 頻脈
  • 脈拍微弱(低血圧)
  • 頻呼吸
  • 乏尿、無尿
  • 冷や汗
  • 皮膚の蒼白

循環血液量減少性ショックの治療

治療の基本は、循環血液量を復元し、心拍出量・末梢循環を回復させる!!
輸液輸血

輸液量の目安は、尿量1ml/㎏/時間を確保する。
過剰な輸液は、電解質バランスが崩れたり、心臓や腎臓へ負荷がかかる可能性があります。
また心不全や肺水腫などの原因になることもあります。

血液分布異常性ショック

血液分布異常性ショックとは・・・
「後負荷」の破綻
=血管の拡張が起こり、血管抵抗が減少する
⇒相対的に血管内容量が不十分になることで起こります。

特徴:循環血液量自体は正常に保たれている

血液分布異常性ショックの原因と症状

  • 敗血症性ショック
    原因:細菌やウイルスなどの病原体が感染し、過剰な炎症反応によって血管内皮細胞が障害されること。
  • アナフィラキシーショック
    原因:食物や薬剤などのアレルギー
  • 神経原性ショック
    原因:脊髄損傷などによって血管収縮に関わる交感神経の失調

敗血症性ショックについては、こちらの記事で解説しています。

心外閉塞・拘束性ショック

心外閉塞・拘束性ショックとは・・・
心臓の外側で起きた問題により心臓のポンプ機能が障害
⇒心拍出量が低下して起こるショック状態

特徴:心臓自体は元気

心外閉塞・拘束性ショックの原因

  • 肺塞栓症
  • 心タンポナーデ
  • 緊張性気胸
    心室の充満不全による心拍出量の減少

心タンポナーデに関してはこちらの記事を参照ください。

心原性ショック

心原性ショックとは・・・
心ポンプ機能の低下
⇒全身の臓器に血液を十分に送り出せない
⇒全身の組織における循環不全

心原性ショックの原因

  • ACS(急性冠症候群)
  • 心筋炎・心筋症
  • 弁膜症
  • 不整脈

心原性ショックの症状

心臓のポンプ機能不全による症状が起きます。

  • 収縮期血圧低下
  • 尿量減少
  • 四肢冷感
  • 左心不全症状
    • 肺うっ血
    • 呼吸困難 など
  • 右心不全症状
    • 浮腫 など

アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックとは・・・
アレルゲンが体内に侵入することによる、全身のⅠ型アレルギー症状がおこる(アナフィラキシー)
血管透過性の亢進
⇒血圧低下などのショック症状が起こる
⇒アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックの症状

アレルゲンが体内に侵入すると、数分~数十分以内に、ショックによる血管拡張血液透過性の亢進がおこる。
症状として以下が挙げられる。

  • 血圧低下
  • 頻脈
  • 咽頭、喉頭、気道粘膜浮腫による気道閉塞
  • 腸管浮腫による腹痛や下痢
  • 意識障害 等

アナフィラキシーショックによる死亡原因は、ショックによる循環不全や気道閉塞による呼吸不全の2つである。

アナフィラキシーショックの治療

アナフィラキシーショックは、重症化した場合、死に至る危険があります。
そのため、早期発見・早期治療が重要です。

・原因の可能性がある薬剤が投与中の場合は直ちに中止する。
・アドレナリン(エピネフリン)の筋肉注射
・急速輸液
・気道閉塞がある場合、酸素投与。必要時は、挿管などによる気道確保。

なぜ、アドレナリンを投与するの??
アドレナリン投与することで
・ヒスタミンの放出を抑制
・血管透過性の低下
・血管収縮による血圧上昇

アナフィラキシー症状が一時的に緩和されるからです。

ショックの兆候(5P)

ショックの5P

1.蒼白(pallor)

2.虚脱(prostration)

3.冷汗(perspiration)

4.脈拍触知不能(pulseless)

5.呼吸不全(pulmonary deficiency)

このうちの一つでも当てはまったらショックを疑います。
ショックは加速度的に進行します。
ショックを早期認識するために観察が必要です。

「ちょっと前と何か違うな。」
という気づきが重要になります。
上記の5Pに加えて、見ておくと良いのが
CRT(毛細血管再充満時間)
3秒以上白い状態が続いたら末梢の循環障害があると判断します。

ショックバイタルってなに??

先輩から「ショックバイタルだよ!」って聞いたことないですか??
それってどんなバイタルなんだ??って思いますよね。
明確な定義は無いようです。

収縮期血圧が90mmHg以下になったとき
あるいは通常の血圧より30mmHg以上低下したとき

これに加えて
・頻呼吸
・脈拍、脈の強さ(徐脈・頻脈)
がある人のことを指していると思います。


ショックの代償期から非代償期に移行している患者のことを指していて、これからの治療に急を要する患者さんだということがわかります。

ショックインデックス(SI)

大量出血している手術についているときに、聞いたことはありませんか?
または産科危機的出血の対応フローチャートで目にしたことはありませんか??

ショックインデックスとは・・・
出血性ショックの初期評価に用いる指標のことです。

ショックインデックス = 心拍数 / 収縮期血圧
正常:0.5
軽症:1.0
中等症:1.5
重症:2.0

出血に対して、輸液治療の効果があるか
これから輸血が必要であるか
これらの判断にも使用されます。

ショックの初期対応や看護のポイント

ショックに気づいたらどうすればいいの??
死に至ると知っていたら怖くなりますね。

①人を集める(医師へ報告し、指示を貰う)
急激に状態が変化していく可能性があるため。
救急カートを患者近くに持ってきてもらう

②モニター装着
バイタルサインを観察し、ショックのどの段階にあるかを把握する

③ルート確保(の準備)
薬剤・輸液投与経路の確保
末梢血管の収縮により確保がどんどん困難になっていく。

④酸素投与(の準備)

⑤原因検索

ケア・治療のポイント
A:気道(Airway)
B:呼吸(Breathing)
C:循環(Circulation)
評価と安定化が重要
換気と酸素供給を確保し、
輸液で還流を再開する

日本救急医学会のアナフィラキシーショックに対する簡易チャートです。

https://www.jaam.jp/info/2021/files/anaphylaxis_chart.pdf?v=20210622

まとめ

・ショックは代償期と非代償期に分けられる

・代償期で血圧が低下していない状態、ショック状態である

・ショックの状態は加速度的に変化する

・早期発見、早期治療が大切である

・早期発見のために、血圧以外にも視て、触って観察することが重要である。

ショックに関する国家試験問題も併せて解いてみましょう。

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