カテコラミンは、急性期の治療においてとても重要な薬剤です。
手術室や病棟、ICUなどでもよく目にすることがあると思います。
これらの薬剤の基本的な作用や使い分け、投与中の注意点をしっかり理解することで、患者さんの安全を守ることにつながります!
一緒に勉強していきましょうね!
カテコラミンとは・・・
正しくは、カテコールアミンです。
実際の医療の現場では、カテコラミンと呼ぶことが多いですね。
カテコラミンは、交感神経系に関与する神経伝達物質です。
=アドレナリン受容体を刺激する作用を持つ薬剤
主に
・強心作用(β作用)
・血管収縮作用(α作用)
があります。
これらは急性のショック状態や循環器系のトラブルにおいて重要な役割を果たします。
循環作動薬ともいわれますね!
カテコラミンは6種類あり、そのうち3種類は体内で生成されるホルモンでもあります。
体内でも生成されるカテコラミン
・ドパミン
・ノルアドレナリン
・アドレナリン
薬剤として投与されるカテコラミン
・ドブタミン
・イソプロテレノール
・フェニレフリン
アドレナリン受容体ってなに??
アドレナリン受容体とは・・・
神経伝達物質をキャッチするグローブのこと。
受容体は体内のさまざまな臓器に存在します。
カテコラミンという物質が、受容体に結合することで、臓器それぞれ特定の生理的役割を果たしています。
アドレナリン受容体の種類
・α受容体
α1受容体
α2受容体
・β受容体
β1受容体
β2受容体
β3受容体
それぞれの受容体によって作用が違います。
またカテコラミンの種類によって、α作用とβ作用の割合が違ってきます。
この表をイラストにすると・・・・
カテコラミンの種類と使用目的(薬剤の商品名)
ドパミン Dopamine(商品名:イノバン・ドパミン塩酸塩など)(略語:DOA)
- 生成場所
主に脳内(特に黒質や視床下部)
(腎臓や副腎でも合成されます。) - 作用
血管に作用して血流を調整します。
用量によって作用が違います!! - 使用による有害事象
麻痺性イレウス
末梢の虚血
不整脈
低用量(~3µg/kg/min)
D1受容体に作用
⇒腎臓・腸間膜・冠動脈の血流増加
尿量の増加を促す利尿作用が主な効果です。
血圧への影響は少ない。
使用目的
・体に水が溜まっている心不全に使用
中用量(3〜10 µg/kg/min)
β1作用:心臓の収縮力と心拍数が上がる
末梢の血管は収縮しない
使用目的
・消化管の手術後など
血圧は上げたいけど、末梢の血管を収縮させたくないときに使用
高用量(10 µg/kg/min 以上)
β1作用:血管収縮作用により強い血圧上昇を引き起こします。
心収縮力をさらに強化します。
使用目的
心原性ショック
出血性ショック
ノルアドレナリンを使用しても改善しない低血圧
※それぞれの用量は、患者の状態や治療目的に応じて選択されます。
※µg/kg/min=γ(ガンマ)
ガンマについては、こちらの記事を参照してください。
ノルアドレナリン Norepinephrine(商品名:ノルアドレナリン)(略語:NAD)
- 生成場所
・交感神経の末端(神経伝達物質として)
・副腎髄質で作られます。
交感神経が刺激されると分泌される。 - 作用
主にα1作用:血管収縮作用の血圧上昇
β1作用:心臓の収縮力と心拍数が上がる
血管を収縮させるけど、強心作用もある
⇒徐脈や心拍出量低下は起こらない - 使用目的
全身麻酔時の急性低血圧
循環血液量低下を伴う低血圧やショック
心原生ショック
敗血症性ショック - 使用による有害事象
徐脈
敗血症性ショックについてはこちらの記事を参考にしてください
アドレナリン Epinephrine(商品名:アドレナリン・ボスミンなど)(略語:AD)
- 生成場所
・副腎髄質
ストレス反応において重要な役割を果たします。 - 作用
α1作用:血管収縮
β1作用:強心作用
β2作用:気管支拡張
末梢血管や大動脈を収縮させ、余った血液を冠動脈や脳に回す。
心臓を刺激することで心臓の動きを復活させる。 - 使用目的
アナフィラキシーショック(α1作用、β1作用、β2作用)
喘息発作(β2作用)
心停止(β1作用) - 使用による有害事象
不整脈
心筋酸素需要の増加
ドブタミン Dobutamine(商品名:ドブタミン・ドブトレックスなど)(略語:DOB)
- 概要
特に心臓の収縮力を高める効果があります。 - 作用
β1作用:心臓の収縮力と心拍数が上がる
β2作用:血管拡張による、血圧低下
α1作用:血管収縮作用の血圧上昇
β2作用とα1作用で血圧の低下と上昇を打ち消しあう。
⇒純粋な強心薬として使用される。 - 使用目的
急性心不全(β1作用、β2作用)
特に、血圧を大きく上げずに心臓の働きを強化したい場合に有効です。
また、ドブタミンは用量によって作用が異なります。
低用量(1~5 µg/kg/min)
β1作用⇒心収縮力の増強(強心作用)・心拍数の増加を引き起こします。
β2作用⇒血管拡張(血圧低下)
※低用量では血管が拡張し、血圧が下がる。
高用量(5~ µg/kg/min)
β1作用⇒心収縮力の増強(強心作用)・心拍数の増加を引き起こします。
β2作用⇒血管拡張(血圧低下)
α1作用⇒血管収縮(血圧上昇)
※高容量では、α1作用が出てくる。
β2・α1作用で打ち消しあう。
⇒血管に影響を与えない、純粋な強心薬として使われる。
イソプロテレノール Isoproterenol(商品名:プロタノールなど)
- 概要
β作用のみのカテコラミン
純粋なβ刺激薬 - 作用
β1作用:心臓の収縮力と心拍数が上がる
β2作用:血管拡張作用により、血圧が下がる
カテコラミンは循環不全の時に使う場合が多い。
よって血圧が下がるイソプロテレノールは臨床では使いづらい。
フェニレフリン Phenylephrine(商品名:ネオシネジン)
- 概要
純粋なα刺激薬
β作用はほぼない。
=心臓自体には作用しない。 - 作用
α1作用:血管の収縮で血圧上昇 - 使用による有害事象
①反射性徐脈
血管収縮
⇒血圧が上昇する
(血管の内圧が上昇する)
⇒血圧を元に戻すために徐脈になる
②心拍出量の低下
血管収縮(血管が狭くなる)
⇒血液量が減少する
=心拍出量の低下 - 使用目的
頻脈を伴う血圧低下に使用します。
全身麻酔薬の使用による、血管拡張を防止する。
ネオシネジンは、手術室ではよく目にします。
しかし、副作用があるので病棟では使用頻度は低いです。
まとめ
・カテコラミンの基本的な作用は・・・
強心作用(β1作用)
血管収縮作用(α1作用)
・カテコラミンの種類によって、α作用・β作用の割合が違う。
カテコラミンの使い分けについて簡単にまとめると・・・・
強心薬として、心拍出量を上げたいとき
⇒ドブタミン
血管収縮薬として、血管抵抗を上げたいとき
⇒ノルアドレナリン
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