手術室看護師が解説!手術室見学の事前学習のポイント、マナー、目標について

手術室見学のポイント 実習対策

看護学生にとって「辛い・きつい」と感じるのは、実習の時間かもしれません。
特に手術室の実習は経験する機会が少なく、不安を感じる学生も多いと思います。
例えば、「手術室の看護師は怖い」という噂を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、手術室の看護師たちは患者の安全を最優先にし、チームで協力して業務を行っているのです。

私は現役手術室看護師で10年以上手術室業務に携わっています。
手術室での学生指導の経験もあり、学生さんが困っている様子もたくさん見てきました。

この記事では、
手術室見学実習を控えている学生さんの

・何を勉強したら良いかわからない
・目標の決め方がわからない
・手術室見学で何を見てきたらよいかがわからない


を解決することをお手伝いします。

手術室見学実習事前学習のポイント

手術室見学の事前学習って何をすればよいの??
勉強していても情報が見つからず、焦っていませんか?
ここでは、調べでもわかりにくいことをまとめておきました!

・手術室の環境
・手術室看護師の役割
・手術を受ける患者のサポートについて
・実際の手術の流れ

手術室の環境

空調システムについて

空調システム
手術室では温度湿度清浄度が徹底的に管理されています。
手術室内の空気は、高性能なフィルターを使って清潔に保たれ、
患者の安全と感染予防に大きな役割を果たしています。

温度:18~26℃に設定され、患者の状態に応じて調整されます。
湿度:40~60%が推奨され、静電気や微生物の増殖を防ぎます。
清浄度:HEPAフィルターを使い、微生物や塵を除去して無菌環境を維持します。

換気回数と層流システム
手術室内の換気回数は1時間に20回以上が求められています。
空気の流れは「層流システム」によって制御され、空気が天井から床へと流れることで、無菌環境を保っています。

手術室内の清潔エリア区分

手術室は大きく次の3つのエリアに分けられます。
それぞれ空調の管理に違いがあります。

清潔エリア
手術台周囲、器械台、執刀医や器械出し看護師が作業する場所。
無菌状態を保つ場所です。

準清潔エリア
手術室の周囲やスタッフの移動範囲。
手術室に入る前の準備スペースや手術器具の準備エリアが含まれます。

不潔エリア
滅菌されていない物品が置かれる場所です。

清潔エリアは自動扉で区切られており、自動扉の開閉は足元のセンサーで操作します。
エリアの清潔度を保つため、扉の開閉は最小限にすることが重要です。

そのため、学生は扉を開けたら必ず閉まったことを確認しましょう。

過去には、扉が開けっぱなしになっているのを見つけて、
看護師が厳しく注意している場面を見たこともあります…。

手術室看護師の役割

手術に携わる看護師は以下の2つに役割が分けられます。

  • 器械出し看護師(直接介助)
  • 外回り看護師(間接介助)

それぞれの役割を果たしながら、手術を安全かつスムーズに進行させることが手術室看護師の役割です。
ではそれぞれの役割について解説していきます。

器械出し看護師の役割(直接介助看護師)

器械出し看護師の役割
手術中に使用する器具の準備と管理を行います。
無菌操作を徹底し、器具のカウントや手術の進行に合わせた支援を行います。

手術前
・手術に必要な物品を予測し、準備する
・手術に使用する器具の点検(破損がないか等)
・器械のメニュー表に沿って器械をカウントし、過不足がない事を確認する
・術前に準備されたガーゼの枚数をカウントする

手術中
・手術の進行に合わせて、医師へ器具を手渡す
・手術の進行を予測し、使用する器具、物品を準備する
・手術中も器具の破損がないかを確認する
・縫合糸などは持針器につけて、使用できるようにして医師へ受け渡す
・閉創まえに器具やガーゼなどのカウントをし、体内遺残を防止する

手術後
・再度器具や物品の過不足や破損がない事をカウントし、確認をする

外回り看護師の役割(間接介助看護師)

外回り看護師の役割
手術室における器械出し以外のことを担当します。
手術中、患者のバイタルサインや出血量などを監視し、外科医や麻酔科医に必要な情報を提供します。
また、術前・術中(意識下手術の場合)・術後のケアや患者の精神的サポートも重要な役割です。

手術前
・手術を受ける患者の精神的ケア
・医師に言い出しにくいことの代弁者となる
・手術や治療について理解しているかを確認
・患者情報を収集、アセスメントし、必要と予測される物品や薬剤などの準備
 ・体温管理のための加温具
 ・褥瘡予防の除圧スポンジ
 ・体位固定のための器具など
・患者誤認の防止のための最終確認
・麻酔導入のサポート
(薬剤投与や挿管の介助)
・手術体位による合併症予防
(皮膚損傷や神経障害、DVTなど)

手術中
・患者の状態を常に監視し麻酔科医や外科医に報告
・バイタルサイン、出血量、尿量などの観察
・器械出し看護師へ必要な物品の提供
・不潔野にあるガーゼカウント
・意識下手術の場合、痛みや不快症状をできる限り取り除けるように努める
・手術経過記録などの記録
・必要な輸液や輸血の準備

手術後
・創部処置の介助
・抜管の介助
・呼吸、循環、意識状態の観察
・病棟への申し送り

手術を受ける患者のサポートについて

手術室看護師は、患者の状態を確認し、手術中のケアを提供します。
例えば、患者の体温管理や体位調整、術後の合併症予防が含まれます。
また、患者が安心できるよう精神的なサポートも行います。

術前準備
手術前に患者の病歴、アレルギー情報、体温、血圧などの基本的な健康状態を確認します。
確認した情報をもとに、アセスメントを行い必要な看護を考えます。
例)
関節拘縮や円背がある患者さんの手術体位の検討
褥瘡のリスクがある人に対する予防策に必要な物品の準備
体温低下のリスクが高い人・術式にたいする保温・加温方法の検討 などなど

患者への精神的サポート
患者が手術に不安を感じることも多いため、精神的なサポートも求められます。
手術前後に不安を軽減するためのコミュニケーションも大切です。
事前に患者に対して手術入室~退室までの流れについて説明し、不安を和らげるためにサポートします。
また手術室入室後からも表情などを観察し声掛けサポートを行います。

患者誤認の防止
・ダブルチェック
患者の確認を複数のスタッフが行います
病棟看護師・手術室看護師・麻酔科医や外科医などで患者の名前、生年月日、手術内容などを確認します。
・患者の識別バンドの認証
患者には識別バンドを付け、手術前にバンドの情報と患者の情報を一致させます。
(識別バンドには患者の名前、ID番号、手術予定部位などが記載されます。)
・確認の際の口頭確認
患者確認時には、必ず患者本人に名前、生年月日、手術内容を言ってもらいます。
本人が言えない場合は、必ず患者識別バンドや同意書類などとともに2名以上で確認します。

手術患者・部位の誤認防止
・手術部位のマーキング
手術前に、手術を行う部位を医師が患者の体にマーキングします。
・手術部位の指差し確認
手術同意書の手術部位、マーキング部位が合致しているかを確認します。
「タイムアウト」プロセス
手術が始まる前に、「タイムアウト」と呼ばれる確認作業を行います。
手術が開始される前にすべてのスタッフが手術内容を再確認します。
これには必ず外科医、麻酔科医、看護師が関与し、誤りがないかを最終確認します。
この段階で疑問があれば、手術を開始する前に解決します。

麻酔管理のサポート
患者が麻酔を受ける際には、麻酔科医と協力して患者の安全を守ります。
必要に応じて挿管の介助を行います。
麻酔後、患者が安定しているかを確認することも重要です。
膀胱留置カテーテルの挿入や尿量の測定を行う。

手術体位の調整
術式に合わせて必要な手術体位に調整する。
手術体位によって良肢位があり、良肢位で体位を調整することで神経損傷を予防する。
手術体位によっては必要な物品の準備を行う。
また皮膚状態の観察を行い褥瘡の予防を行う。

深部静脈血栓症(DVT)の予防
弾性ストッキングの装着や正しくはけているかの確認
間欠的空気圧迫装置の装着

手術の基本的な流れ

①手術室に入室
患者の確認
患者確認を徹底し患者誤認を防止します。
名前、生年月日、手術内容、手術部位などが正しいか確認します。
手術・麻酔同意書・輸血同意書など必要な書類がそろっているかもこの時点で確認します。
病棟看護師から手術室看護師へ申し送りがあります。
(申し送りを廃止している施設もあります)

②患者にモニターを装着
患者がベッドに寝かせます。
必要があれば移動や移乗の介助を行います。
心電図・血圧計・SPO2モニターを装着し、バイタルサインを確認します。

③点滴ルートキープなど麻酔の準備
点滴がなければ点滴をとり、薬剤投与の経路を確保します。
血圧などのバイタルサインの測定が終わり、麻酔科医の判断で麻酔が開始されます。

④麻酔の開始
・全身麻酔
・硬膜外麻酔
・脊椎麻酔
それぞれの手順で行われます。

⑤膀胱留置カテーテルの挿入や間欠的空気圧迫装置の装着

⑥手術体位の調整
良肢位に調整できるように枕(スポンジ)の挿入を行う

⑦消毒と清潔ガウンの装着
手術部位が消毒され、滅菌された手術器具が使用されます。
手術室内のスタッフは手術に必要な器具を準備し、清潔な環境を保ちます。
消毒後は清潔な布(ドレープ)が患者にかけられます。
その後電気メスや吸引などの必要なデバイスが清潔エリアから不潔エリアにおろされます。
それらの接続、設定を行い手術での使用に備えます。

⑧タイムアウト
手術前の最終確認を行い、患者の誤認を防止や手術の注意点などを確認します。

⑨手術開始
閉創前にガーゼや器械などのカウントを行い、正しい個数があるかを確認し体内遺残を防止します。

⑩手術後の処置
創部をガーゼやドレッシング材で覆います。
消毒や出血など患者の体の清拭を行います。
腹部の手術や骨折の手術などでは麻酔覚醒前にレントゲンを撮影します。

⑪患者の覚醒
全身麻酔や鎮静薬を使用した場合、麻酔から覚醒させ呼吸などバイタルサインを確認します。
挿管されていれば抜管します。
そして安全に患者が病室に帰室できる状態であるかを観察します。

⑫手術室の退室
局所麻酔の手術以外は基本的にベッドで退室します。
退室後リカバリールームなどでバイタルサインの観察を行います。
手術室看護師から病棟看護師へ手術内容・出血量・尿量・ドレーン類の有無などの申し送りが行われます。

手術室見学見学のポイント

手術室見学の事前学習のポイントは、以下の7つです。

  • 手術室の看護師の役割
  • 手術室の環境
  • 見学する手術の麻酔
  • 見学する手術の体位
  • バイタルサインの正常値
  • 見学する手術の体位
  • 手術の合併症について

手術室の見学のポイントを以下にまとめました!

・手術室看護師の役割や手術室の環境
 実際に見学することで理解が深まります。
 感染予防のための、手術室内の環境整備方法などについての質問をしても良いでしょう。
 理解が深まることで、記憶に留まり定期テストや国試の対策につながります。

手術室看護師の患者とのコミュニケーション方法
 手術を受ける患者は、緊張や不安を抱いていることが多いです。
 また患者の不安を軽減するために何をしているかなどを看護師に質問しても良いでしょう。

 ・見学する手術の麻酔方法
 全身麻酔、脊椎麻酔、局所麻酔、全身麻酔+硬膜外麻酔
 ①どのような麻酔方法なのか
 ②バイタルサインにどのような影響を及ぼすか
 ③予測される合併症は何か
 を事前学習しておきましょう。
 そうすることで手術室看護師が、合併症予防のために何をしているかを実際に見学して学ぶことができます。
 

・見学する手術の体位
 手術体位は仰臥位だけでなく、腹臥位、側臥位、ジャックナイフ位などさまざまです。
 ①手術体位がどんな形なのか
 ②手術体位の良肢位
 ③手術体位による合併症
 (神経障害や褥瘡好発部位)
 手術後に合併症が起こっていないかを観察するポイントとなります。
 
 また、手術体位によってベッドの作成方法が変わてきます。
 どんなベッドになっていたかも見学のポイントです。
 
 体位をとるときに気を付けているポイントなどを質問してみても良いかもしれません。
 また、長時間手術では褥瘡を形成することがあります。
 皮膚保護の方法などを見学できると良いですね。

・DVT予防策
 これもよく学生に質問している看護師がいます。
 事前に学習しておくと良いです。
 ①間欠的空気圧迫装置の禁忌
 ②DVTにはどのような危険性があるか

・バイタルサインの正常値
 ほかの実習でも学習していると思いますが、手術中は常にバイタルサインをモニタリングしています。
 看護師に質問される可能性が高いです。
 麻酔導入前のバイタルサインを観察し、麻酔導入後どう変化しているかを見学します。
 それにより麻酔による生体への反応を実際に見ることができます。

・どのように多職種との連携が図られているか
 手術室に出入りする多職種とはどんな人たちなのかを事前に知っておくことで、見学しやすいです。
 看護師のほかに
 ・執刀医
 ・麻酔科医
 ・臨床工学技士
 ・放射線技師 など
 実際に見学する

・見学する手術の術式
 簡単にでいいので何をする手術なのかは把握しておきましょう。
 またその手術による合併症を知っておくことで術後の患者の観察の視点となります。
 調べてもわからなかったことは看護師に質問すると良いでしょう。

 【見ておくと術後の看護につながること】
 ・皮膚切開の位置、大きさ
 ・ドレーンの挿入方法と挿入位置

体内遺残防止の方法
 ガーゼカウントの方法
 器械カウントの方法
 術後レントゲンによる体内遺残がない事の確認など
 体内遺残防止のために行われている行動を見学で学んできましょう。

滅菌物の取り扱い、清潔操作
 手術に使う器具や物品は、滅菌されています。
 実際の滅菌パックを見せてもらいましょう。
 また、滅菌物の受け渡し方法をや管理方法を見学しましょう。

 【滅菌物である根拠】
 ・滅菌期限内
 ・未開封(袋に破損がない)
 ・汚染がない(濡れていない)
 ・インジケーターの色が変化している
 など
 

患者の保護
 全身麻酔の手術を受ける患者さんは、自身で不快なことを伝えることができません。
 患者の羞恥心への配慮をどのように行っているか
 など患者さんの不利益になるようなことに対して、看護師がどのように対処しているかなどを観察しましょう。
 

手術室見学のマナー

手術室での見学は、感染予防患者のプライバシーを守るために、いくつかのマナーを守る必要があります。
手術室内では静かに行動し、指定されたエリアを守ることが重要です。
また、患者のプライバシーを尊重し、見学中に得た情報を外部に漏らさないように心掛けましょう。

・清潔を保つ
手術室では感染予防が非常に重要です。
手洗いと消毒: 手術室に入る前に必ず手を洗い、消毒液で消毒します。
手術室の扉の開閉にも気を付けます。

服装
手術室に入る前に、指定された手術着、帽子、マスクなどを着用します。
特に、髪の毛は帽子で完全に隠しましょう。
持ち物の管理
携帯電話やカバンなど、手術室内に持ち込んではいけない物品はロッカーなどに預け、必要なものだけ持参します。

・静かに行動する
手術中は医師は集中して手術に臨みます。
手術室内では、無駄に音を立てず、周囲の状況に合わせた行動が必要です。

見学中にスタッフと話す際は、手術の進行を妨げないよう、静かに話すことを心がけましょう
質問があれば、手術が一段落したタイミングで聞くようにします。手術中に急に質問するのは避けましょう。
入室直後から麻酔導入・手術開始までと手術終了から退室まではかなり忙しいです。
目標の発表や質問の時間は手術患者入室時間前に行い、いつ質問していいかなどは確認しておきましょう。

・指定されたエリアにとどまる
手術室には清潔エリア、準清潔エリア、不潔エリアなど、重要なエリア分けがあります。
見学中は、指定された場所にとどまり、勝手に移動しないようにしましょう。
また、見学中にエリア移動をする必要がある場合は、必ずスタッフの許可を得てから行動します。

・患者のプライバシーの尊重や羞恥心への配慮を行う
手術室では患者のプライバシーが守られなければなりません。
患者情報の取り扱い: 見学中に患者の情報や状態を他の人に話すことは厳禁です。
患者への配慮: 手術中に患者がどのような状態かを見ているだけでも、患者のプライバシーや尊厳を常に意識しましょう。

・準備を整えておく
手術室見学の前には、しっかりと事前学習をしておくとともに、必要な道具や資料を用意しておきます。
見学の目的を確認する: 見学の目的を明確にしておくと、何を観察し、どんな質問をするべきかが分かりやすくなります。

最後に大事なこと!
体調が悪くなったら我慢せずすぐに看護師に声をかけてください!!
疲れや緊張、長時間の立位など・・・結構、手術中体調が悪くなる学生さんが多いです。

手術室見学の目標の立て方

学校の実習要綱に合わせて目標を立てる必要があります。
まずは学校の実習要綱に書かれている、実習の目的を理解しましょう。

手術室見学の目的は以下のようなものがあります。
・手術室の環境や構造を理解し、説明できる
・手術室看護師の主な役割を理解し、説明できる
・手術、麻酔による生体への反応を理解し、説明できる
・多職種の連携について理解し、説明できる。
などが挙げられていることが多いです。

手術室見学の目標の例

・手術室の見学を通して、手術室の構造や空調の特徴を知る。
・手術室の見学を通して、手術室看護師の役割や患者の安全を守るための看護の実践について知る。
・バイタルサインをモニタリングし、手術や麻酔による生体への反応を観察する。
・多職種間の情報共有の場面を見学し、連携がスムーズに行われるためのポイントを学ぶ。

これは一例です。

まとめ

手術室見学実習は、とても緊張すると思います。
手術室看護師は、たまに怖い人がいるのも事実です(笑)

しっかり事前学習を行い、マナーを守ればたくさんのことを教えてもらえるでしょう。
手術室で見学したことを術後看護に活かすために、見学のポイントをしっかり押さえて、意義のある見学実習にしてください!!

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