胸腔ドレーンは、吸引圧やエアリーク、呼吸性変動など、難しい専門用語が多いです。
したがって苦手意識を持つ方も少なくありません。
さらに、看護師国家試験でも頻出テーマの一つなので、しっかり勉強する必要があります。
実習中には、看護師さんから胸腔ドレーンについて質問されるかもしれないと不安に思うこともありますよね。
そんな不安を解消するために、この記事では胸腔ドレーンに関する知識をわかりやすくまとめました。
これを読んで胸腔ドレーンの理解を深め、実習や国家試験に自信を持って臨みましょう!
この記事を読んでわかること
・胸腔ドレーンの仕組み(原理・各部の役割)
・胸腔ドレーンの目的
・胸腔ドレーン挿入中患者の観察項目
・呼吸性変動とエアリークについて
・胸腔ドレーン挿入中患者の看護
・胸腔ドレーン抜去の目安
・胸腔ドレーン抜去後の観察項目
胸腔ドレーンの仕組み(各部の役割)
排液ボトル(患者に一番近いボトル)
・排液された液体をためる役割
水封室(ウォーターシール)
・胸腔内にたまった空気を水の中に取り込む役割
・体外の空気が胸腔内へ逆流するのを防ぐ役割
コップに水がないときに吸うと空気が吸引されますね
=陰圧の胸腔内に空気が引き込まれる
=肺がしぼむ(虚脱する)
必ず水封室には滅菌蒸留水が規定量入っていることを確認しましょう。
・水封室には滅菌蒸留水(滅菌精製水)を入れる(第99回国家試験に出題あり)
吸引圧制御部(吸引器に接続される側)
・吸引圧を均一に保つ役割がある。
滅菌蒸留水の水位で吸引圧を設定する場合は、設定値のメモリまで蒸留水を入れる。
ダイアル式の場合は、ダイアルのメモリで吸引圧を設定しましょう。
胸腔ドレーンの目的
・虚脱した肺の再膨張の促進
・胸腔内圧を適正に保つ
・胸膜腔に貯留した空気や体液(浸出液・体液・膿瘍)を持続的に体外へ排出する
胸腔内圧について
・呼吸状態によって変動する
・常に陰圧
安静時 -5cmH2O
呼気 -4~-8cmH2O
吸気 -5~-10cmH2O
陰圧が高いときに肺は胸膜に引き付けられる=肺が広がる
胸腔ドレーンの必要性
①治療的
・胸水の排液
・空気の排気(気胸)
・薬剤の投与(抗菌薬など)
ドレーンチューブの内腔が2つに分かれているものがある。
排液の経路と薬剤投与の経路にすることができる。
②情報的
・排液された液体性状の確認
血性なら出血
膿性なら膿胸
乳び色なら乳び胸(胸腔に存在するリンパ管からのリンパ液もれ)
胸腔ドレーン挿入中患者の観察項目
ここでは、患者⇒ドレーンチューブ⇒排液ボトル⇒水封室⇒吸引圧制御部の順番で、それぞれの観察項目を挙げていきます。
患者自身の観察項目
患者の自覚症状
・疼痛の有無 増強していないか
胸腔ドレーンが留置されている部位は、肋間神経や横隔神経などがあり疼痛を感じやすい。
痛みが強い⇒ドレーンがしっかり固定されているか確認、鎮痛剤の使用の検討
・呼吸困難感の有無 増強していないか
皮下気腫による気管の圧迫や排液不良による肺の圧迫など
・バイタルサイン
血圧
上昇:疼痛や不快感による交感神経の亢進など
低下:出血などによる循環血液量の低下など
脈拍
頻脈:疼痛や感染兆候、出血など
排液ボトルや皮膚の観察等原因探索をする
徐脈:強い疼痛(迷走神経反射)
SPO2
低下:酸素化不良 その他の観察を行い、原因探索をする
皮膚状態
・チューブ挿入部の感染兆候がないか
・皮下気腫の形成がないか
空気なので上方にたまりやすい。
頚部・前胸部・背部など観察する。
頚部の皮下気腫は、気管を圧迫します。
したがって呼吸困難感を発生させる可能性があります。
皮下気腫形成部にはマーキングし、広がりがないかを確認します。
呼吸状態
・呼吸音
・胸郭運動に左右差はないか、正常に胸郭が上がっているか
・SPO2の値
検査データ
・感染兆候がないか
(WBC・CRPの値)
胸腔ドレーンチューブの観察
チューブの屈曲や血栓などによる閉塞がないか
チューブが閉塞すると・・・胸腔内貯留物が排液されないため治療効果が得られません。
閉塞により、胸腔内圧の変化がドレーンバッグまで伝わらない
⇒水封部の呼吸性変動の消失
国家試験に胸腔ドレーンチューブミルキングに関する出題あり。
ミルキングはドレーン内の圧が変化するため肺実質の損傷や緊張性気胸の可能性あり。
実施しても良いが基本行わない。(禁忌ではない)
適宜排液バッグに排液を流して停滞を防ぎましょう。
排液ボトルの観察
排液の観察
性状
・血性 血胸 血性胸水 術後出血
・膿性 感染合併症 感染膿胸
・乳び性 ミルク様
量
・増加・多量 200ml/時間(又は4ml/㎏/時間)以上の血性排液が継続
・急激な減少 ドレーン閉塞の可能性
ねじれ、屈曲、破損、凝血などによる閉塞
色の変化 徐々に薄くなっているか、急に血性になっていないか
・血性~淡血性
・血性から淡血性 術後2~3日
・淡黄血性
・淡淡血性
・淡黄、漿液性
血性の排液+多量+血圧低下 頻脈 尿量減少⇒術後出血を疑う
排液の観察以外にもほかの観察項目も併せてアセスメントしましょう。
排液バッグが排液でいっぱいになっていないか
排液バッグがいっぱいになっていると陰圧をかけることができず、
排液が逆流する可能性があります。
排液バッグがいっぱいになっていたら交換しなくてはなりません。
水封室(ウォーターシール)の観察
呼吸性移動の有無
・あり 呼吸により胸腔内圧の変動がドレーンに伝わっている
・なし ドレーンの閉塞 屈曲?血栓閉塞?先端が胸壁に当たっている?
肺が再拡張してドレーンを圧迫している=治癒
エアリークの有無 (水封室に気泡がでているか)
・あり=胸腔内から空気が漏れている
気胸は治癒の過程で徐々に気泡の出方・頻度・量が減少
量が増えたり、減らない場合
気胸再発・治癒不良または接続外れなど器械側の不良
・なし=正常
吸引圧制御部の観察
気泡の有無
気泡あり=吸引が効いている証拠
持続的少量の気泡=適切な陰圧
気泡なし=陰圧がかかっていない
吸引の接続が正常か、回路にはずれがないかなどを確認する
吸引圧が指示通りであるか
吸引圧は一般的に-10~-15cmH2O程度で設定
国家試験の選択肢に吸引圧について過去に出題されていました
・吸引圧は-20㎝H2O以上に設定する・・・✕
正しくは-10~-15cmH2O
呼吸性変動とエアリークの関係について
呼吸性変動 ありorなし | エアリーク ありorなし | アセスメント |
あり | なし | 気胸がなく ドレナージが効果的 |
あり | あり | 挿入直後 排気ドレナージができている (気胸の場合) |
なし | なし | 気胸の治癒 (肺が完全に拡張している) ドレーンの閉塞 |
なし | なし | 基本的にはおこらない ドレーン接続部が外れている可能性 |
胸腔ドレーン挿入中の患者の看護(国家試験の選択肢として出題あり)
・歩行について
医師からの制限がなければ可能
(範囲の制限もなし)
※注意事項を理解できる場合
・ドレーンバッグの位置について
ドレーン刺入部より20㎝以上、下に設置する
ドレーンの排液が逆流しないようするため
・ドレーンのクランプについて
原則、胸腔ドレーンはクランプしない!!
気胸を改善する目的で胸腔ドレーンを使用している場合
⇒クランプをすると緊急性気胸となり危険です。
・ドレーンクランプが必要な場合
・抜去前に気胸の有無を確認するとき
・排液ボトルを交換するとき
・吸引圧とドレーン刺入部の疼痛の関係
吸引圧の高さはドレーン刺入部の疼痛とは
関係ありません。
・万が一ドレーンの接続が外れた場合
チューブをすぐにクランプする。
呼吸状態・バイタルサインを観察する。
胸腔ドレーン抜去の目安
・気胸の場合
エアリークなし
・胸水の場合
排液量が200ml/日以下
・膿胸の場合
十分に排膿でき排液の性状が漿液性
・血胸の場合
新たな出血がない
・術後の場合
排液量は減少し、排液の性状が血性から漿液性へと変化
これらの状態と胸部レントゲンやCT、患者の状態などから、医師が総合的に判断します。
胸腔ドレーン抜去後の観察項目
・バイタルサイン
・呼吸状態
・創部の状態
出血
感染兆候
皮下気腫
これらを観察し、異常の早期発見に努めましょう。
まとめ
胸腔ドレーンは以下の3つの役割があります。
・虚脱した肺の再膨張の促進
・胸腔内圧を適正に保つ
・胸膜腔に貯留した空気や体液(浸出液・体液・膿瘍)を持続的に体外へ排出する
胸腔ドレーンバッグは通常のドレーンバッグと違い、水封室があります。
水封室の役割は、以下の2つです。
・胸腔内にたまった空気を水の中に取り込む
・体外の空気が胸腔内へ逆流するのを防ぐ
胸腔ドレーンの観察項目
・患者(バイタルサイン・皮膚状態・呼吸状態)
・ドレーンチューブ
・ドレーンバッグ(排液ボトル・水封室・吸引圧制御部)
それぞれを観察して総合的にアセスメントすることが必要です。
胸腔ドレーンはその仕組みと観察項目の多さから、難しいと感じると思います。
しかし、この記事を繰り返し読み返し、知識を整理していくことで、少しずつ理解を深めることができます。
しっかりとした知識を身につけることで、自信を持って実習や国家試験に臨むことができると思います。
国家試験問題にチャレンジしてみましょう。
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