5分でわかる!【手術室での輸血】基礎編|種類・単位量、手順

手術室での輸血が初めての新人看護師でも5分で理解!
手術室での輸血、基礎知識!

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手術室で使われる主な輸血用血液製剤と使用目的

赤血球濃厚液(RBC)

  • 出血や貧血による酸素運搬能の低下を補う
  • Hb値を回復させ、組織への酸素供給を維持

新鮮凍結血漿(FFP)

  • 手術中の凝固因子不足を補い、止血を助ける
  • 大量輸血で希釈性凝固障害が起きたときに使用

血小板濃厚液(PC)

  • 術中出血時の血小板減少や血小板機能異常を補う
  • 特に心臓手術や肝切除など大量出血リスクが高い症例で重要

大量出血時は、RBCだけでなくFFPやPCをバランス良く補うことが重要!

輸血の量と単位、保存条件・保存期間

製剤1単位量(成人用)保存条件有効期間
赤血球濃厚液(RBC)1単位=約140mL2〜6℃採血後21日間
新鮮凍結血漿(FFP)1単位=約80mL-20℃以下採血後1年間
融解後3時間以内
血小板濃厚液(PC)1単位=約20mL20〜24℃
振とう保存
採血後4日後

輸血パックのIrとLRって何?

Ir(Irradiated:照射血)

輸血による、GVHD(移植片対宿主)を予防するために、放射線照射を行った血液製剤。

LR(Leukocytes Reduced:白血球除去)

保存に伴う、凝集塊の反応や発熱反応、免疫反応などの関連副作用の予防、低減のために保存前白血球除去を行った血液製剤。

手術室での輸血事前準備(同意書・検査)

輸血を実施するための確認事項

  1. 輸血の同意書
  2. 血液型検査
  3. 交差適合試験(クロスマッチ)
  4. 不規則抗体の有無
  5. 輸血のオーダー

血液型検査

  • ABO式、Rh式の両方を検査

不規則抗体検査

  • ABO式・Rh式以外の血液型(Lewis式、MNSs式、Duffy式など)に対する抗体
    =不規則抗体 の有無を調べる。
  • 術前にこの抗体があると、交差適合試験で適合する血液が見つかりにくくなることがある。

不規則抗体が陽性の場合

  • 適合する血液を事前に確保しておく必要がある。

術前に不規則抗体が陽性だとわかっていると、
緊急輸血がスムーズに開始できる!
予期せぬ副作用(溶血反応など)の予防。

交差適合試験:クロスマッチ

「患者の血清」と「輸血バックの赤血球」を混ぜて反応を確認。
溶血や凝集が起こらないか最終チェックする検査。

ABO式・Rh式で血液型が一致していても、他の型に対する抗体が原因で副作用が起きる可能性があるため必須の検査。

赤血球が含まれない、FFPやPCでは通常不要!

T&S(タイプ&スクリーン)とは

  • 輸血の可能性が低い手術で用いられる簡略準備
  • ABO式・RhD型と不規則抗体の有無を事前に確認
  • 不規則抗体が陰性なら、クロスマッチ済み血液を準備せず手術開始可能

輸血オーダーと看護師の対応

パターン①輸血同意書なし/輸血オーダーなし

  • 術中の場合、家族にICをし、輸血同意書を取得。
  • 採血(クロスマッチ、不規則抗体)
  • 輸血オーダー

パターン②輸血同意書あり/輸血オーダーなし

  • 採血(クロスマッチ:生化学用スピッツ)
  • 輸血オーダー

パターン③輸血同意書あり/準備血あり

  • 輸血部へ電話して、輸血をすぐに取り寄せることが可能。

輸血の投与方法

①輸血パックの外装確認

  • 変色、溶血、凝固などがないか
  • 輸血パックの破損がないか

②患者と輸血製剤の照合

  • 複数名で行う
  • パソコンでの照合
  • 患者氏名、血液型、製剤名、製造番号、有効期限など
  • 製剤の受け渡し時、準備時、実施前に確認

手術中だと本人と確認することが難しい。
各施設での照合の方法で実施しましょう!

③輸血の投与方法

輸血は、単独投与が原則!

製剤推奨する輸血セットポイント
赤血球濃厚液(RBC)輸血用セット(標準型)すべての赤血球輸血で必須。
カリウム吸着フィルターを使う場合は、指示に従う。
新鮮凍結血漿(FFP)輸血用セット(標準型)融解後すぐ投与。
赤血球と同じ標準セットでOK。
血小板濃厚液(PC)血小板専用セット血小板が目詰まりしやすいため、目の細かい血小板専用フィルターを使用。

透析患者へのRBCの投与は、
カリウム吸着フィルターを使用する指示がでるよ!

輸血前・中・後の患者の観察

タイミング観察項目
輸血前体温
血圧
脈拍
SpO₂
基準値を記録しておく。
輸血中
(開始後15分まで特に注意)
体温
血圧
脈拍
SpO₂
5〜15分ごとに観察
※初期反応が出やすい
悪寒・戦慄
背部痛
胸部圧迫感
呼吸困難
吐き気
皮疹
発疹
チアノーゼ
呼吸パターンの変化
輸血後
(終了後1〜2時間は特に注意)
終了直後と30分〜1時間後
体温
血圧
脈拍
SpO₂
発熱
発疹
黄疸
乏尿など

輸血の副作用とその対応

※施設ごとのマニュアルに従い、異常があれば必ず医師・輸血部に報告してください。

副作用の種類主な症状・兆候初期対応
急性溶血反応発熱
悪寒
腰背部痛
血圧低下
血尿
輸血中止
バイタル安定化
輸液で循環維持
輸血残存製剤・血液検体を輸血部へ提出
アレルギー反応(軽度)発疹
かゆみ
じんましん
輸血一時中止
抗ヒスタミン投与
輸血再開は医師判断
アナフィラキシー(重度)発疹
呼吸困難
血圧低下
ショック
輸血中止
救命処置
輸血残存製剤・血液検体を輸血部へ提出
発熱性非溶血性反応発熱
悪寒
体温上昇
輸血一時中止
解熱薬投与
必要に応じて再開
循環負荷(TACO)呼吸困難
浮腫
血圧上昇
心拍数増加
輸血速度調整
利尿薬投与
酸素投与
鉄過剰・カリウム上昇高K血症
不整脈
輸血速度調整
カリウム吸着フィルター使用
心電図モニター

まとめ

手術室での輸血は、どの製剤を、どの量で、どのタイミングで投与するかをチームで判断する治療です。
新人看護師は以下を意識しましょう。

  • 製剤の種類・保存条件を把握
  • 同意書・検査結果の確認を徹底
  • 専用ルート・加温装置・フィルターを準備
  • 開始15分以内の副作用チェックを最優先

手術室では一瞬の判断が患者の命を守ります

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