5分でわかる!【分離肺換気】挿管手順と仕組みをわかりやすく解説

5分でわかるシリーズ!

胸部外科の手術に入ると必ず耳にする「分離肺換気」。

でも新人のうちは、

  • 「普通の挿管とどう違うの?」
  • 「観察ポイントは?」

    と戸惑うことも多いですよね。

この記事では、手術室看護師1年目の方に向けて

  • 分離肺換気の基本
  • ダブルルーメンチューブ(DLT)の仕組み
  • 挿管介助の方法
  • 観察項目

をわかりやすく解説します!!

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分離肺換気とは?(目的・術式)

分離肺換気とは、左右の肺を別々に換気する方法のことです。

目的:分離肺換気が必要な手術

  • 肺切除術
  • 食道切除術
  • 胸部大動脈手術

一方の肺を虚脱させて、術野を確保するために用いられる。

普通の挿管チューブとダブルルーメンチューブの違い

項目普通の気管内チューブ(ETT)ダブルルーメンチューブ(DLT)
構造単一ルーメン2つのルーメン
(気管支用+気管用)
カフ1つ2つ
(主気管カフ+気管支カフ)
挿管の難易度比較的容易難易度が高い
(ファイバー確認が必要)
チューブ径細め
(例:7.0〜8.0mm)
太め
(例:男性37Fr、女性35Fr)

ダブルルーメンチューブ(DLT)の構造と仕組み

分離肺換気を行うために使われるのが ダブルルーメンチューブ です。

構造

ダブルルーメンチューブは、名前の通り 「2本のチューブが1つになった構造」 をしています。

気管用ルーメン

  • 気管に入って両肺につながる管。
  • カフ(白)で気管を閉じて、空気が漏れないようにする。

気管支用ルーメン

  • 一方の気管支(右または左)に入る管。
  • 気管支用カフ(青)でブロックして、一方の肺だけを換気できます。

この2本を使い分けることで、
「片方の肺だけ換気」+「もう片方は虚脱(空気を入れない)」
という状態を作ることができます。
これが「分離肺換気」の仕組みです。

仕組み

左用DLTで「右肺だけ換気」する仕組み

  1. 左気管支カフを膨らませて左気管支をブロック
    (左肺に空気が行かないようにする)
  2. 気管ルーメンから右肺にだけ空気を送る

★青カフ入れて、青チューブを遮断

気管ルーメンは両肺換気に使用できる!
左気管支カフを膨らませることで、空気は右肺にしか流れなくなる。

その結果、右肺だけを換気でき、左肺は虚脱させることができる。


左用DLTで「左肺だけ換気」する仕組み

  1. 気管ルーメンを遮断
  2. 気管支ルーメンだけで換気する
    → これで「左肺だけ換気」されます。

★青カフ入れて、白チューブを遮断

左用ダブルルーメンチューブが基本の理由

DLTには 右用左用 の2種類がありますが、ほとんどの手術で使われるのは 左用DLT です。

項目右主気管支左主気管支
長さ短い長い
太さ太め細め
分岐角度気管からほぼ直線的に分岐
(角度が浅い)
気管から斜めに分岐
(角度が急)
分岐の特徴すぐに上葉気管支が分岐するため、チューブで塞ぎやすい上葉分岐まで距離があるため、チューブが安定しやすい

右は気管支が短く、安定しにくいので基本左が選択される!

右用ダブルルーメンチューブが必要になるケース

基本は左用DLTが使われますが、例外的に右用DLTが選ばれる場合もあります。

  • 左肺や左主気管支に手術があるとき
     → 左主気管支が術野に含まれるため、左用DLTを入れると手術操作の妨げになる。
  • 左主気管支に狭窄や病変がある場合
     → 左用DLTを挿入できない、もしくは換気が確保できない。
  • 麻酔科医が特殊な換気戦略をとるとき
     → 両肺の換気バランスを調整するために右用が適する場合がある。

右用DLTは、上葉気管支を塞がないように正確に位置を合わせる必要があるため、
挿管や確認が難しく、使用頻度は低いのが実際です。


分離肺換気時(DLT)の挿管手順

1. 準備

  • 使用するDLTのサイズ確認(身長・性別で選択)
  • スタイレットや吸引カテーテルの準備
  • 気管支ファイバースコープの動作確認
  • カフシリンジの準備
  • チューブクランプ鉗子(必要時)

2. 挿管の介助

  1. 通常の挿管と同様に喉頭鏡を渡す。
  2. ダブルルーメンチューブを渡す。
  3. 麻酔科医の指示でスタイレットを抜く。
  4. 位置が決まったら、白カフ(気管用)を入れる。
  5. 専用アダプター(Y字)を使用し、呼吸回路と接続。
  6. 換気の確認。(両肺換気になっているか)
  7. 白チューブから、気管支ファイバー挿入。
  8. ファイバーで気管分岐部を確認。
  9. 青チューブから気管支ファイバーを挿入。
  10. 白カフを脱気し、左気管支へチューブを誘導。
  11. 青チューブの位置確認。
  12. 両方のカフを膨らませる。

最初に白カフを入れるよ!
すぐに調整できるように、カフシリンジは手元に置いておこう!

3. 換気開始後の観察と青カフの位置

①気管支ファイバーによる観察(左用の場合)

白チューブから気管支ファイバーを挿入し、以下を確認。

  • 青チューブが気管支に入っているか
  • 青カフが気管に出てきていないか
  • 青チューブが第二分岐部まではみ出していないか
  • 白チューブが気管支まで入っていないか

聴診による観察(左用の場合)

聴診で左右が独立して換気(片肺換気)可能かを観察します。

手順白気管カフ青気管支カフチューブ遮断換気状態聴診結果
ありなしなし両肺換気両肺聴取可能
ありあり白チューブ遮断左肺換気左肺のみ聴取可能
右肺聴取不可
ありあり青チューブ遮断右肺換気右肺のみ聴取可能
左肺聴取不可
ありありなし両肺換気両肺聴取可能

体位変換後にも、チューブの位置を確認するよ!


ダブルルーメンチューブ挿入時の介助のポイント

  • 麻酔科医がファイバー使用中は、チューブの位置がずれないように保持。
  • チューブを動かすときは、両方のカフを脱気する。
  • チューブの位置調整中のSPO2の値を観察。
  • 気管支ファイバーは術中も使用することがある。
    (位置調整、分泌物の除去、換気困難の原因検索)

ダブルルーメンチューブの抜管

通常の抜管操作と同じです。

抜管についてはコチラ

挿管のままICUへ帰室する場合は、通常の気管挿管チューブに入れ替えることもあります。

まとめ:SpO₂低下に注意

  • 片肺換気中
    虚脱側肺には酸素が入らないため、換気側肺の酸素化不足で全身SpO₂が低下しやすい。
  • 挿管中
    DLTは太く挿管が難しいため、挿管時もSpO₂低下に注意。
  • 共通の対策
    聴診、チューブ位置・カフ状態、モニター値を常に確認し、低下時は早期対応。

DLTの仕組みを理解して、スムーズに介助を行おう!

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