5分でわかる!【CO₂ナルコーシスとは?】オペ後の観察や対応についてを超簡単に解説

術後に
「なんとなくぼーっとしている」
「呼吸が浅い」
…そんな患者さんを見たことはありませんか?
CO₂ナルコーシスは、見逃すと命に関わる重大な病態です。

この記事では、CO₂ナルコーシスの定義・症状・メカニズムから、術後に看護師ができる観察ポイントや初期対応までをわかりやすく解説します。

  1. CO2ナルコーシスとは
    1. CO₂ナルコーシスの定義
    2. CO₂ナルコーシスの三徴候(三主徴)
      1. その他の典型症状(注意すべき所見)
    3. Q1.頻脈になるのはなぜ?
    4. Q2.意識障害はなぜ起こる?
    5. Q3.血圧はどうなる?
      1. 初期:血圧が上昇する
      2. 進行すると:血圧が低下するリスク
  2. CO₂ナルコーシスの原因とメカニズム【フローチャートで解説】
    1. 【STEP 1】呼吸のコントロール方法は2種類!
    2. 【STEP 2】COPD患者では…?中枢が反応しない
    3. 【STEP 3】術後に酸素を高濃度で与えると…
  3. 💊 術後に起こりやすい追加要因
  4. 血ガスでどう見分ける?CO2ナルコーシスの所見
    1. 典型的な血ガス分析の所見
  5. CO₂ナルコーシス対応フロー例【手術室看護師の動き】
    1. STEP 1:観察で“違和感”をキャッチ!
    2. STEP 2:CO₂ナルコーシスを疑う(観察項目)
    3. STEP 3:すぐに行う初期対応
    4. STEP 4:症状が悪化したらどうする?
      1. 👩‍⚕️看護師が担う役割
    5. STEP 5:その後の予後と再発予防
      1. ✅ 回復期には…
      2. ✅ 慢性呼吸不全がある場合は…
  6. まとめ
  7. おまけ:国試にもよく出る!CO₂ナルコーシスの症状と覚え方
    1. ゴロで覚える!CO₂ナルコーシスの症状
      1. 「じあいを失う CO₂ナルコーシス」
  8. 看護師国家試験でCO₂ナルコーシスを疑うポイント
    1. ① 問題文に「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」が出てきたら警戒!
    2. ② 血ガス(ABG)の値をチェック!
      1. ゴロで覚える基準値の変化
  9. 国試対策POINT
  10. 関連記事

CO2ナルコーシスとは

CO₂ナルコーシスの定義

CO₂ナルコーシス(carbon dioxide narcosis)とは?

体内に二酸化炭素(CO₂)が過剰に蓄積し、中枢神経系が抑制される状態

CO₂による麻酔作用とも言われ、

  • 意識障害
  • 呼吸抑制
  • 循環変動

を引き起こします。

CO₂ナルコーシスの三徴候(三主徴)

医学的・臨床的に見られやすい典型的3徴候は以下の通り

徴候病態生理の背景
自発呼吸の減弱呼吸ドライブの低下
(O₂刺激消失、薬剤影響)
呼吸性アシドーシス高CO₂によりpHが低下
(血中が酸性化)
意識障害CO₂による中枢抑制作用
+脳血管拡張による脳圧上昇

その他の典型症状(注意すべき所見)

  • 傾眠頭痛
    (高酸素血症による)
  • 顔面紅潮、発汗
    (脳・顔面血管の拡張による)
  • 血圧上昇
    (体幹部の血管拡張による)
  • 羽ばたき振戦・企図振戦
    (脳圧亢進に伴う)

Q1.頻脈になるのはなぜ?

一見、呼吸が抑制されているのになぜ頻脈?と感じるかもしれません。

  • 体の酸素不足(低酸素)
  • 二酸化炭素の過剰(高CO₂)

を代償しようとしている反応です。

CO₂上昇 → 酸性血症(pH低下)→ 交感神経優位
心拍数上昇→ 組織への酸素供給を維持しようとする

Q2.意識障害はなぜ起こる?

CO₂が過剰に蓄積すると、次の2つの理由で意識障害が起こります

  • CO₂による中枢神経抑制作用
    (CO₂麻酔作用)
    → CO₂は脳の機能を鈍らせ、傾眠〜昏睡を招く
  • 脳血流の増加と脳圧亢進
    → CO₂上昇により脳血管が拡張
    → 頭蓋内圧が上がる
    → 脳浮腫や意識障害

軽度では「ぼーっとしてる」「やけに静か」
進行するとJCS II〜IIIレベルの昏睡に至る可能性も。

Q3.血圧はどうなる?

初期:血圧が上昇する

  • 高CO₂ → 酸性血症 → 交感神経が刺激される
  • 体幹部の血管が拡張 → 相対的に末梢血管抵抗が増す

その結果、一時的に血圧が上昇することがあります

進行すると:血圧が低下するリスク

  • CO₂による中枢神経抑制が進行すると、循環中枢の機能も低下
  • 重度の意識障害や呼吸停止が起こると、血圧も急激に低下することがあります

CO₂ナルコーシスの原因とメカニズム【フローチャートで解説】

【STEP 1】呼吸のコントロール方法は2種類!

呼吸調節を行う受容体は2つ!

  • 中枢化学受容体(延髄)
    血中CO₂ 濃度が上昇
    → 呼吸を促進する
    ※健康な人ではCO₂の上昇が主な呼吸刺激。
  • 末梢化学受容体(頸動脈小体・大動脈小体)
    血中O2濃度が低下
    → 呼吸を促進する

呼吸をするきっかけは、二種類!
・血中CO₂ 濃度が上昇
・血中O2濃度が低下


【STEP 2】COPD患者では…?中枢が反応しない

慢性的にCO₂が高い(例:PaCO₂ ≧ 50 mmHg)状態が続くと…

中枢受容体は鈍くなって反応しなくなる(=高CO₂順応)

代わりに、末梢受容体(O₂の低下)で呼吸を調節

もともと体内のCO2濃度が高い人は、
低酸素(O₂低下)
が呼吸刺激となる!

【STEP 3】術後に酸素を高濃度で与えると…

術後、低酸素を懸念して酸素を高濃度で投与すると、CO₂ナルコーシスを引き起こす可能性があります。

特にCOPD患者などでは、慢性高CO₂順応により中枢受容体が反応しづらく、O₂低下が主な呼吸刺激です。
そこへ高濃度酸素を投与すると

  • 呼吸刺激が消失
  • 呼吸数低下
  • CO₂蓄積
  • 意識障害へ進行

💊 術後に起こりやすい追加要因

要因内容
オピオイド鎮痛薬による呼吸中枢の抑制
(さらに呼吸数が減る)
麻酔薬作用残存により覚醒不良・呼吸中枢への影響
看護観察の盲点“SpO₂が保たれている=安全”と誤解されることが多い

血ガスでどう見分ける?CO2ナルコーシスの所見

典型的な血ガス分析の所見

項目所見
PaCO₂大きく上昇
> 80 mmHg で強く疑う
pH低下
< 7.30:呼吸性アシドーシス)
HCO₃⁻上昇
(代償性)
PaO₂正常〜低下または上昇
(酸素投与による)

pH低下+PaCO2高値が揃えば、
CO2ナルコーシスの疑い大!


CO₂ナルコーシス対応フロー例【手術室看護師の動き】

STEP 1:観察で“違和感”をキャッチ!

リカバリールームでモニター観察中に…

  • 呼吸数が急に低下
    12回→8回以下
  • 意識レベルの低下
    呼びかけに反応なし
    手術室退室時よりレベル低下
  • SpO₂は95%以上で保たれていても、なんだか反応が鈍い

「SpO₂が良い=安全」ではない!
呼吸抑制の初期兆候を見逃さず、
「数値ではなく反応の変化」に注目することが重要です。

STEP 2:CO₂ナルコーシスを疑う(観察項目)

以下の症状がそろえば要注意

観察項目変化
呼吸数減少(10回未満)
意識レベル傾眠・昏睡傾向(JCS II〜III)
SpO₂一見良好でも油断禁物
顔色・紅潮血管拡張による顔面紅潮
羽ばたき振戦軽度の中枢神経症状

「CO₂ナルコーシスかも?」
と思ったらすぐに報告+初動対応


STEP 3:すぐに行う初期対応

  1. 酸素投与の流量を確認
  2. 医師へ報告
  3. 動脈血ガスの採取準備など
    酸素投与中なら投与量と投与方法を記録
    動脈血を採取する物品等の準備

pH<7.30 + PaCO₂>80 Torr
→ CO₂ナルコーシスの可能性大!


STEP 4:症状が悪化したらどうする?

🔻以下のような変化があれば緊急対応が必要!

状態変化対応
意識レベル:JCS III医師へ即時報告+再評価
呼吸停止 or 徐呼吸換気補助が必要
血ガスでpH<7.25NPPV適応(準備・介助)
自発呼吸なし再挿管・人工呼吸器管理へ移行

👩‍⚕️看護師が担う役割

  • 気道確保補助(マスク換気・体位)
  • 挿管の準備・介助
  • 急変時の記録 等

NPPV(非侵襲的陽圧換気)とは?
NPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation)
マスクを使って気道に陽圧をかけることで、人工呼吸器と同じように換気を助ける方法です。

STEP 5:その後の予後と再発予防

✅ 回復期には…

  • 酸素管理
  • 呼吸リハビリ

✅ 慢性呼吸不全がある場合は…

  • 在宅酸素療法(HOT)やNPPV療法の導入を検討
  • 家族への指導・退院指導での教育支援も重要

まとめ

術後の“なんとなく変”に気づける観察力が、CO₂ナルコーシスから命を守ります!
数値だけでなく、患者さんの「反応」に注目しましょう。

おまけ:国試にもよく出る!CO₂ナルコーシスの症状と覚え方

ゴロで覚える!CO₂ナルコーシスの症状

「じあいを失う CO₂ナルコーシス」


  • 自発呼吸の減弱(呼吸数低下)

  • アシドーシス(呼吸性)

  • 意識障害(眠気・昏睡など)

▶ 意味
「自分(じあい)の呼吸や意識を失っていく」
=命にかかわる状態!


看護師国家試験でCO₂ナルコーシスを疑うポイント

① 問題文に「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」が出てきたら警戒!

  • COPD患者は高CO₂に体が慣れている
    (=中枢の呼吸刺激が鈍っている)
  • 呼吸刺激は主に「低酸素」頼りになっている!

➡ ここで酸素を高流量で投与すると、「呼吸のきっかけ」を失ってしまう!


② 血ガス(ABG)の値をチェック!

ゴロで覚える基準値の変化

「パパ45歳、ななみ落ちた」

  • パパ(PaCO₂)
    =45超えたら注意!
    50以上で高CO₂血症!
  • ななみ(pH)
    7.30未満に落ちたらアシドーシス!

国試対策POINT

✔ COPD+酸素投与
✔ 「PaCO₂↑」「pH↓」
✔ SpO₂が保たれている

症状・血ガス・病態をセットで押さえよう!

「COPD」や「高CO₂」「アシドーシス」のキーワードに注目!

ゴロ「じあいを失う」「パパ45、ななみ落ちた」で判断!

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