意識レベルの評価は、患者の状態を迅速かつ正確に把握するために欠かせない重要な手段です。
この評価が適切に行われることで、患者の病態の進行を予測し、必要な処置を迅速に行うことができます。
看護学生にとって、これらのスケールを実際に使用する機会が少ないため、覚えるのが難しいですよね。
それにもかかわらず、国家試験で頻出の項目であるため、苦労している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、意識レベルを評価するスケールであるGCSとJCSの違いや使い分けについて解説します。
看護学生や新人看護師の方々が評価方法を理解し、日々の実習や看護業務、国家試験に役立てていただければ嬉しいです。
この記事を読むとわかること
意識レベルの評価の目的
患者の状態の把握
意識レベルの評価により、患者の現在の状態や変化を把握することができる。
また意識が低下している場合は、脳や神経系に問題がある可能性がある。
そのため、その兆候を早期に捉えることが重要です。
病状の重症度の確認
意識レベルの低下は、脳卒中や頭部外傷、感染症、薬物中毒、低血糖など、さまざまな疾患や外的要因に関連しています。
これにより、患者の病状がどれくらい重篤であるかを評価することができます。
治療の効果のモニタリング
意識レベルを定期的に評価することで、治療がどれくらい効果的であるか、または病状が改善または悪化しているかをモニターできます。
生命の危機状態の早期発見
意識の変化が急激であったり、持続的に低下している場合、直ちに対応が必要な場合が多いです。意識レベルの評価は、生命に関わる危機的状態(例えば、昏睡やショック状態など)の早期発見に役立ちます。
看護や医療介入の計画
意識レベルの状態によって、看護や医療介入の方法が異なります。意識がはっきりしている場合と、昏睡状態にある場合では、対応方法やリスク管理が大きく変わります。
以上のことより意識障害を適切に把握する必要があります。
代表的なスケールはJCSとGCSです。
Comaとは、「昏睡」を意味します。
JCSとはJapan Coma Scale(ジャパン・コーマ・スケール)
日本で使用されている意識障害の評価方法です。
JCSは0から300の間で表現されます。
0が正常な状態
数字が大きくなるほど、重症の意識障害である。
JCSは、まず覚醒度合いによって3段階(1桁、2桁、3桁)に分けられます。
さらにその中でも3段階に細分化されます。
⇒「3-3-9度方式」とも呼ばれます。
【JCSの特徴】
・より簡便で、即座に意識レベルを評価できる。
したがって急性期の患者や広範囲に使う場面に適しています。
・GCSに比べて点数の幅が狭く、急性期における短期間の評価には便利。
細かなレベルの判断が必要な場合には不十分なこともあります。
GCSとはGlasgow Coma Scale(グラスゴー・コーマ・スケール)
GCSは海外でも広く使用されている意識障害の評価指標です。
GCSは3要素に分けて評価します。
・E(開眼機能)
・V(言語機能)
・M(運動機能)
評価の点数
・E(開眼機能)は1~4点、
・V(言語機能)は1~5点、
・M(運動機能)は1~6点
そのため、E、V、Mの合計点は3~15点になります
健常者は15点
最も重度の意識障害の場合は3点
※挿管中はVをTと評価する。
【GCS特徴】
・医療現場で広く使用され、特に外的要因(頭部外傷、脳卒中、薬物中毒など)による意識障害の程度を評価するのに有効です。
・意識状態を詳細に評価できるため、定期的なモニタリングに便利です。
JCSは数字が大きいほど重症
GCSは数字が小さいほど重症
JCSとGCSの違いと使い分け
どちらも意識障害を評価するならどっちかだけでいいじゃん!!!
って思いますよね。
これから違いと使い分けについて説明します。
JCSとGCSの違い
項目 | GCS | JCS |
評価方法 | ・E(開眼機能) ・V(言語機能) ・M(運動機能) | 覚醒度(Ⅰ~Ⅲ) 反応状態(3段階) |
点数の範囲 | 3~15点 (15点が正常、3点が重症) | 0~300 (0が正常、300が重症) |
使用場面 | 外的要因の評価 (脳外傷、薬物中毒、脳卒中など) | 日本国内での 急性期や簡易的な評価に使用 |
評価の詳細さ | 詳細な意識レベル評価が可能 | 簡易で即座に結果が得られる |
JCSとGCSの使い分け
・JCSは、覚醒度によって意識レベルを簡便に評価できるます。
そのため、特に救急や急性期、または緊急の判断が求められる状況で役立ちます。
意識の変化を迅速に把握し、初期対応を行う際に有用です。
・GCSは、意識状態のレベルを詳細に評価できます。
特に外的要因(頭部外傷、脳卒中など)による意識障害の状態を継続的にモニタリングしたり、治療効果を評価したりする際に使用されます。
詳細な意識評価が求められる場合に適しています。
・JCS:救急や急性期や緊急時に使用
・GCS:亜急性~慢性期、治療の効果を評価に使用
JCSとGCSの評価の方法
挿管などで発語できない人の評価は、VはTと表記する。
意識レベルの実際の評価方法
このような流れでJCSを使って意識レベルを評価します。
GCSはこれに加えて運動機能の評価を行っていきます。
例えば、手を握ってくださいと言う。
握れたらM6という評価になります。
・瞳孔(大きさ・左右差・対光反射)
・バイタルサイン(呼吸・脈拍・血圧・体温・SPO2)
・皮膚の状態
・呼吸状態
・異常行動
・痙攣の有無
・姿勢
などを合わせて観察しておきます。
また、意識レベルは時間の経過ごとに変化します。
少しの変化も見逃さないように観察していく必要があります。
国家試験の過去問で意識レベルの評価の練習してみましょう!!
実際に意識レベルを評価してみよう!(練習問題)
①JCSで評価してください。
看護師:「○○さーん(大声)」肩をたたく。
患者:反応がありません。
看護師:少し爪を押しますね。
患者:目を開けないが、手を払いのける動作をした。
解答
JCS:Ⅲ- 100
②JCSで評価してください。
看護師:「○○さーん、お名前教えてください」
患者:「はい・・・○○・・・」
看護師:「ここ、どこだかわかりますか?」
患者:「・・・い・・え?」
解答
JCS:Ⅰ-2
③GCSで評価してください。
看護師:「○○さん、ここどこだか分かりますか。」
患者:目を開けながら「病院です。」
看護師:「手を握れますか?」
患者:「握れます。」ぎゅっと握る
解答
GCS:E4V5M6
まとめ
・GCSは、より詳細で医学的に標準的な評価を行いたい場合に適しています。
特に頭部外傷や脳卒中患者の管理に使われます。
・JCSは、より早く意識レベルの評価が必要な場合や、急性期における迅速な判断が求められる場面で使用されます。
・正常な人のGCSは、E4V5M6 の15点
・最も重症な人のGCSは、E1V1M1 の3点
・正常な人のJCSは、0
・最も重症な人のJCSは、Ⅲ-300
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