5分でわかる!術中バイタル管理【SpO₂編】低下の原因と初期対応

5分でわかるシリーズ!

「手術中、SpO₂がじわじわ下がってきた…でもどうしたらいいかわからない!」
新人のころ、こんな焦りを感じたことはありませんか?
この記事では、“SpO₂低下時にまず見るべきポイント”から“見落としがちな原因”までを5分で解説します。

※この記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。

SpO₂とは?手術中での正常値と臨床的意義

SpO₂(経皮的動脈血酸素飽和度)とは、動脈血中のヘモグロビンに結合している酸素の割合を示す指標です。
パルスオキシメーターによって、非侵襲的にモニタリングされます。

術中におけるSpO₂の基準値

状態SpO₂の値解説
正常95〜100%常にこの範囲内を保つのが理想
軽度低下90〜94%早期介入を検討
明らかな低下<90%低酸素血症のリスク
即対応が必要
  • 術中ではFiO₂(吸入酸素濃度)が高いため、基本的には95%以上の維持が望ましいとされています。

SpO₂から読み取る重要なアセスメントポイント

SpO₂は呼吸状態だけでなく、循環・末梢血流の指標にもなります!

観察ポイント関連臓器意味
酸素化の評価換気や拡散の異常の早期発見
循環の評価心臓・血管ショックや循環不全の補助的指標
末梢血流の評価末梢組織血流量・体温・血圧の変化に反応

SpO₂は“呼吸の数字”で終わらせないことが看護師のアセスメント力です。

術中にSpO₂が低下する主な原因

SpO₂の低下にはさまざまな原因があります。以下の表にまとめました。

カテゴリ具体的な原因例
呼吸器系無呼吸
低換気
気道閉塞
片肺換気
循環系出血性ショック
心拍出量低下
末梢循環障害
体位・術式側臥位
腹臥位
頭低位
気腹
片肺換気
デバイストラブルセンサーずれ
コード接触不良
寒冷での末梢血流低下

術前から始まる!看護師の“備える力”

事前にリスクを予測・準備!

  • 術式や体位、患者背景からSpO₂低下リスクを予測
  • 麻酔科医・外科医の意図(片肺換気など)を事前に把握
  • 入室時SpO₂を記録=その人の平常値

観察の視点を広げよう

  • モニターだけでなく胸郭の動き・皮膚色・波形も観察
  • 急変時に備えた“先読み”が安全管理の鍵

SpO₂低下時の初期対応

  1. センサー位置の確認
    (ずれ・圧迫・末梢冷感など)
  2. モニター波形の確認
    (プレチスモグラムが浅い=循環不良の可能性)
  3. 呼吸音・胸郭の動き観察
    (片肺換気や無呼吸の除外)
  4. FiO₂・換気設定の確認
    (O₂投与が適切か、麻酔器設定は正常か)
  5. 麻酔科医へ報告
    「SpO₂が88%に低下しています。センサー位置は確認済みで、胸郭の動きに問題ありません。呼吸音も両側で確認できました。」など

報告内容の“質”が、チームに信頼される看護師の第一歩!

数字にとらわれないSpO₂のアセスメント力向上術

SpO₂は波形も見る!

  • プレチスモグラム(モニター上の波形)が浅い or 崩れている
    出血・循環不全の兆候の可能性あり

EtCO₂との組み合わせで「先読み」

  • EtCO₂が低下
    → チューブ抜けや循環不全の早期発見

詳しくはこちらの記事で解説してます!!
5分でわかる!【カプノメーターとは①】
5分でわかる!【カプノメーターとは②】

SpO₂より早く異常に気づける武器に!

術式・体位などからアセスメントする

術式や体位でSpO₂低下のリスクが変わるため、“事前に備える力”も重要です。

状況・術式リスク・注意点
側臥位術側肺が虚脱し、換気不良による低酸素血症のリスク
腹腔鏡手術
(頭低位+CO₂)
気腹と体位で横隔膜が圧迫
肺コンプライアンス低下・低換気
前立腺摘出術など
(砕石位+頭低位)
術野確保で過度の頭低位
肺水腫やSpO₂低下を招きやすい
肺手術
(側臥位+片肺換気)
片肺換気によりSpO₂低下しやすい
FiO₂やPEEPで調整が必要
帝王切開
(妊娠+脊椎麻酔)
妊婦などで下大静脈が圧迫
静脈還流低下とSpO₂低下
小児
(特に乳児)
肺胞が小さく予備能が少ない
急激なSpO₂低下を起こしやすい
高齢者換気・循環ともに予備力低下
体位変換や麻酔で低酸素に傾きやすい
肥満患者
(特に仰臥位)
横隔膜が挙上しやすく、換気障害が起きやすい
重度の側弯症患者胸郭変形で肺活量減少
換気不全のリスクが高い
長時間手術(4時間以上)体位や換気の影響が蓄積し、術後SpO₂低下や肺合併症リスクが上昇
頭部手術
(仰臥位固定)
術中に頭部を動かして気管チューブがずれる
喉頭・咽頭手術術野に近いため気道閉塞やチューブトラブルに直結しやすい
気道分泌物多量の症例
鼻の手術等
分泌物による気道閉塞
→換気障害でSpO₂低下しやすい

【まとめ】SpO₂を読み解ける看護師は強い!

  • SpO₂低下時はまずセンサーと呼吸の確認
  • 波形・EtCO₂・術式とあわせて“全体像”で判断
  • 数字を超えて、“意味”を読み取る観察力を養おう

SpO₂を見て「変だな」と思えるあなたの観察力が、患者さんの命を守る第一歩です。
モニターの“数字”の奥にある“変化のサイン”を、一緒に読み解いていきましょう。

関連記事

おまけ:血中酸素飽和度(SpO₂)と動脈血酸素分圧(PaO₂)の関係

SpO₂とPaO₂の違い

項目SpO₂(血中酸素飽和度)PaO₂(動脈血酸素分圧)
意味酸素と結合している
ヘモグロビンの割合(%)
血液中に溶け込んでいる
酸素分子の量(mmHg)
測定方法パルスオキシメーターで
非侵襲的に測定
動脈血ガス(ABG)検査
で侵襲的に測定(採血)
正常値の目安約96〜99%約80〜100 mmHg
特徴見た目の数字は安定しやすいが、
急激に下がる危険あり
小さな変化も正確に反映される
測定に採血が必要
注意点90%を下回るとPaO₂は急激に低下PaO₂ 60mmHg以下は要注意(SpO₂ 90%以下に相当)

SpO₂とPaO₂の関係はこんな感じ!

PaO₂(mmHg)SpO₂(%)意味
100約99%酸素たっぷり
80約95%十分な酸素量
60約90%ここが境界!これ以下は要注意
40約75%低酸素状態、すぐに介入が必要

この関係は「酸素解離曲線」で表されます。
SpO₂が90%を切ると、PaO₂は急激に下がるため、“SpO₂ 90%”が一つの危険ラインです。

SpO₂はPaO₂の“目安”でしかない!

SpO₂が正常でも以下のようなケースではPaO2が低下している場合があります!

  • 貧血
    ヘモグロビン量が減少し、酸素運搬量が不足
  • 一酸化炭素中毒
    一酸化炭素がヘモグロビンに強く結合し、酸素結合を阻害(SpO₂は誤って高値を示す)
  • 異常ヘモグロビン血症(例:メトヘモグロビン血症)
    ヘモグロビンの構造異常により酸素結合・解離が異常をきたし、SpO₂・PaO₂が乖離

SpO₂が正常でも以下のようなケースでは組織への酸素供給(酸素運搬能)が低下する:

つまり、「SpO₂が高いから大丈夫」とは言い切れない!
“どちらの視点も使えること”が看護師としての強みです!

手術室看護師経験だけじゃ不安な人集合!!

私も新卒からほぼ病棟経験ゼロで手術室に入りました。
正直、知識や技術が足りなくて不安になること、めちゃくちゃありますよね。

そんな方におすすめなのがナースタディ
手術室以外の知識をこっそり勉強できるのでオススメ!
手術室以外の知識もサクッと学べるから、こっそりスキルアップしたい人におすすめです。
高い参考書を買うよりずっと手軽で、忙しい時でも聞き流せるのが嬉しいポイント。
もちろん周術期の内容もカバー!

そして、もっとオススメなのが「急性期ケア専門士認定試験」!
手術室にいる今こそ、急性期の知識をまるっとマスターしちゃいましょう。
急性期ケア専門士公式テキストについてはココから!

急変対応ができるようになれば、怖いものなし!
お局さんにも一歩リードできるかも…?(笑)


急変対応ができれば怖いものなし!
急性期ケア専門士をとって怖い先輩から一歩リードして、黙らせましょう!!


コメント

タイトルとURLをコピーしました