術中のバイタル管理において、心電図や血圧と並び「中心静脈圧(CVP)」も重要なモニター項目です。
特に開腹手術や循環動態が不安定な症例では、CVPの変化が患者の状態を知るカギになります。
今回も5分でCVPの基本についておさらいしましょう!
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中心静脈圧(CVP)とは?

中心静脈圧(CVP)って何?どこの圧?
CVP(Central Venous Pressure)=中心静脈の圧力のこと。
中心静脈とは、心臓のすぐ手前にある大きな静脈(上大静脈など)のこと。
CVPは「右心房内の圧:右心房に戻る静脈血の圧力」を表しています。

つまり、CVPを見ることで、循環血液量や右心の機能を把握することができます。
術中にCVPを測定する目的
目的 | 説明 |
---|---|
循環血液量の評価 | CVPは血管内の「ボリューム(量)」の指標。 低ければ脱水、高ければ過剰循環のサインに。 |
輸液・輸血の指標 | 出血や脱水時、CVPの変化を見ながら補液量を調整。 |
心機能のモニタリング | 特に右心不全の早期発見に有効。 高CVPが持続する場合は心機能低下の可能性も。 |
使用されるケース
CVPの正常値は?
状態 | cmH₂O | mmHg | 観察ポイント |
---|---|---|---|
正常値 | 5〜12 cmH₂O | 約2〜6 mmHg | ・この範囲が一般的な正常値 ・基準は施設ごとに若干異なる場合あり |
高値 | ≧13 cmH₂O | ≧6〜7 mmHg | ・過剰輸液 ・うっ血性心不全 ・右心不全などを疑う ・高PEEP設定や気胸など、 胸腔内圧上昇でも上がることあり |
低値 | ≦4 cmH₂O | ≦2 mmHg | ・出血 ・脱水 ・循環血液量不足が疑われる ・麻酔による末梢血管拡張でも低下することあり |
※あくまで「目安」であり、患者背景・術式・麻酔内容によって異なります。

単位(cmH₂OとmmHg)は施設によって異なるため注意。
【重要】人工呼吸管理中のCVPはどう見る?
全身麻酔で陽圧換気(人工呼吸器)中の患者さんでは、CVPがやや高めに表示されやすい傾向があります。
▶ なぜ?
▶ どう見る?
状態 | CVP変化 | 判断のポイント |
---|---|---|
陽圧換気中 | やや高くなる傾向 | ・換気モード(PEEP設定)を確認 ・吸気時に一過性の上昇は正常範囲 |
自発呼吸下 | 通常範囲に戻る | ・PEEP解除後や術後に値が低下することもあり |
▶ アセスメントのコツ
- CVPが高くても、他のバイタルが安定していれば過剰輸液とは限らない!
- 血圧・尿量・SpO₂・出血量・胸部聴診など、他の情報と組み合わせて総合判断が大切。
CVP測定の準備と注意点

ゼロ点合わせ(基準点)
測定中の注意点

体位変換やベッドローテーション後は、圧センサーの高さを確認しよう!
中心静脈(CV)カテーテルについて

CVカテーテルはどこから挿入する?
優先順位 | 挿入部位 | 特徴・メリット | 解剖学的・手技上の注意点 |
---|---|---|---|
1 | 右内頸静脈 | ・最短で上大静脈に到達しやすい ・まっすぐで穿刺しやすい ・合併症が少ない | ・頸動脈との近接に注意(動脈誤穿刺) ・仰臥位で軽くトレンデレンブルグ位にする |
2 | 右鎖骨下静脈 | ・穿刺時の痛みが少ない ・固定しやすく、患者が動いても抜けにくい | ・気胸のリスクあり(肺尖に近いため) ・動脈穿刺やカテーテル先端の位置にも注意 (上腕頭静脈へ逸れやすい) ※透視を使用して先端を確認することもあるよ |
2 | 左内頸静脈 | ・右側が使用できないときの代替 ・構造は右とほぼ同じ | ・左腕頭静脈を通るため、カテーテルが長くなり屈曲しやすい ・静脈と動脈がより近接しているため、誤穿刺注意 |
4 | 大腿静脈(鼠径部) | ・出血時に圧迫止血が容易 ・救急や蘇生時の一時的ルートとして有効 | ・感染リスクが高い ・深部静脈血栓症のリスクあり ・長期使用には不向き |

正確なカテーテル先端位置は、基本的に「上大静脈と右心房の境界」あたり!
圧ラインはCVカテーテルのどこに接続する?
CV(中心静脈)カテーテルにはルーメン(管)が複数あります。
ダブルなら内腔が2つ、トリプルなら内腔が3つ。

結論:CVPはどこにつないでも測定可能です。
一番右房に近く、太い、遠位(Distal)に接続することが多いかな。
ルーメンの種類 | カテーテルの特徴 | 使用目的 |
---|---|---|
近位 (Proximal) | 心臓から一番遠い Distalより内腔が細い 薬液が1番最初に血中に届く | 循環作動薬や鎮静薬 |
中間 (Medial) | 中間に位置する Distalより内腔が細い | 循環作動薬や鎮静薬 |
遠位 (Distal) | 一番心臓に近い (先端側) 内腔が一番太い | CVPの測定 大量輸液・輸血 |

循環作動薬など少量ずつ投与する薬剤は、内腔が細いプロキシマルかメディアルから投与する。
内腔が細いことで、投与量が安定しやすいのが理由。
私の働く施設では、プロキシマルに循環作動薬・メディアルに輸液(輸血)。
CVPモニターの見方と注意点
CVPはさまざまな因子で変動するので以下の点に注意して観察しましょう!
項目 | 確認ポイント |
---|---|
数値 | 5〜10cmH₂Oが目安(急激な変化に注意) |
トレンド | 徐々に上昇 or 下降していないか? |
他のバイタルと整合性 | CVPが上昇していても血圧は? 尿量は?など総合判断が重要 |
まとめ:数字だけでなく「背景」を観察できるナースに!
CVPは、変化の“数字”を見るだけでなく、
を常にセットで観察することが重要です。
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とくに心外や重症患者、大きな手術につく人ようになってきたら読んでほしい一冊!
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