全身麻酔後の「抜管」は、患者さんの回復を確認しつつ、安全に人工呼吸を終了させる重要なステップです。
この記事では、新人看護師さんに向けて、
を【図解付きでわかりやすく5分で】解説します。
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抜管とは?
術後抜管の基準、条件とは
項目 | 条件・基準 |
---|---|
意識状態 | ・呼名で開眼できる ・従命反応がある |
呼吸状態 | ・自発呼吸がある (呼吸数 8〜25回/分) ・気道内に分泌物なし ・1回換気量 >5ml×体重(kg) ※ ・PaO₂/FiO₂ >300mmHg ※ |
循環動態 | ・血圧・脈拍が安定している |
筋力回復 | ・頭部を5秒以上保持可能 ・手を握る/開く(離握手) ・舌圧子に反発 ・TOF比 0.9以上 |
(画像検査) | ・抜管前の胸部X線で異常所見がない |
※1回換気量 >5ml×体重(kg)
1回の呼吸(吸気)で取り込まれる空気の量が、
最低限「体重1kgあたり5ml」以上必要、という基準です。
麻酔器ではモニター画面の「VT(Tidal Volume)」または「VTe(expiratory tidal volume)」で表示されます
※PaO₂/FiO₂ >300mmHg
「動脈血酸素分圧(PaO₂)」と「吸入酸素濃度(FiO₂)」の比。これは酸素化の指標です。
PaO₂は動脈血ガス分析で情報を得る。
FiO₂は、40%なら「FiO₂0.4」と麻酔器に表示される。
例)FiO₂=0.4のとき、PaO₂が120mmHg以上 → 120÷0.4=300 → OK
抜管の危険因子とは
以下に当てはまる場合は、抜管時のリスクが高く、医師やチームでの慎重な判断が求められます。
抜管の手順と介助方法、観察項目

抜管時に必要な物品
区分 | 必要物品 |
---|---|
感染対策 | 手袋 マスク ゴーグル ガウンなど |
抜管操作用 | フェイスマスク カフシリンジ 吸引装置 吸引カテーテル エアウェイ(経鼻・経口) バイトブロック 聴診器 術後用の酸素マスク |
緊急時対応 | バッグバルブマスク 喉頭鏡 ビデオ喉頭鏡 細めの気管チューブ スタイレット ガムエラスティックブジー 気管チューブイントロデューサー 潤滑ゼリー 声門上器具など |
抜管の手順と看護師の動き
① 手術終了:抜管準備開始
麻酔科の動き | 看護師の動き | 観察項目 |
---|---|---|
・麻酔薬の投与終了 ・100%酸素投与開始 (用手換気で2-3分行う) (抜管に備えて酸素投与) | ・記録準備 ・モニター確認 ・吸引器の準備 ・抜管の準備 | ・SpO₂の推移 ・麻酔深度の変化 ・バイタルサイン |

手術終了後は、消毒を落としたり、創部処置をしたり大忙し!
手術が終わる前から徐々に準備し始めよう!
② 筋弛緩回復の確認
麻酔科の動き | 看護師の動き | 観察項目 |
---|---|---|
・TOFモニターで 筋弛緩の程度を評価 | ・TOFウォッチ装着 ・TOFの数値を確認 | ・自発呼吸の有無 ・TOF比0.9以上で抜管可 ・筋活動の有無確認 |

【注意】覚醒直前の声掛け・不必要な接触はNG⚠️
・覚醒時興奮
・喉頭痙攣
を引き起こす可能性があります。
③ 筋弛緩拮抗薬の投与
麻酔科の動き | 看護師の動き | 観察項目 |
---|---|---|
・筋弛緩が残っていれば ブリディオン等を投与 ・筋弛緩の程度を再評価 | ・TOFの数値を確認 ・投与の介助 ・投与量、時間の確認 ・体動に備える | ・自発呼吸の状態 ・TOF比0.9以上で抜管可 ・筋活動の有無確認 ・咳嗽反射の有無 ・意識レベル ・EtSEVが0.2%以下 →もう起きる目前 |
④ 自発呼吸・覚醒確認
麻酔科の動き | 看護師の動き | 観察項目 |
---|---|---|
・せき込み始めたら呼吸器を用手に切り替える ・抜管の基準、条件を満たしているか観察する | ・覚醒時興奮に注意 ・手術が終わったことを伝える ・離握手を確認する ・必要時頭高位 | ・呼吸数 ・深さ ・SpO₂ ・患者の反応 ・意識レベル (開眼,指示動作など) |

挿管されていることに驚いて、激しい体動があることも!
(覚醒時興奮)
手術が今終わったことを伝えて、落ち着かせましょう!
⑤ 抜管前準備
麻酔科の動き | 看護師の動き | 観察項目 |
---|---|---|
・気道内の分泌物を除去 (気管,口腔内吸引) | ・吸引の介助 (挿管チューブの保持など) ・体動に注意する ・酸素マスクの準備 ・気道確保物品確認 | ・咳嗽反射の有無 ・分泌物の量 ・嚥下反射 ・努力呼吸の有無 |

挿管チューブを噛んでしまうと
・呼吸困難
・挿管チューブの損傷
がおこります。
バイトブロックの位置も見ておきましょう!
⑥ 抜管の実施
麻酔科の動き | 看護師の動き | 観察項目 |
---|---|---|
・吸引抜管 (カフ上の分泌物を除去) ・加圧抜管 (肺胞の虚脱を予防) ・平圧抜管 患者の状態に合わせた抜管法を選択 | ・抜管補助 ・カフエアを抜く ・酸素マスク装着 ・吸引の準備 | ・舌根沈下の有無 ・胸郭運動 ・呼吸苦の有無 ・呼吸音(気管、肺) ・チアノーゼ有無 ・SPO2の値 |

抜管後呼吸状態が悪い場合は、マスク換気をします。
経鼻エアウェイの使用の可能性も頭に入れておきましょう。
抜管後の観察項目(退室基準)
観察項目 | 具体的な基準・評価内容 |
---|---|
自発呼吸 | 自力で安定した呼吸 気道閉塞がない |
咽頭反射・嚥下反射 | 咳嗽や嚥下が可能 誤嚥リスクが低い |
声門閉塞・気管支痙攣の有無 | 喘鳴や呼吸困難がない 異常呼吸音がない |
チアノーゼの有無 | 唇・指先にチアノーゼが見られない (末梢循環が良好) |
SpO₂ | 95%以上を維持できている (酸素投与下または常酸素下) |
シバリング(戦慄)の有無 | 身体の震えがない 熱産生による酸素消費の増加が見られない |
意識レベル | 呼名に応答し 時間・場所・人がわかるなど 清明な意識状態 |
除痛の状態 | 適切に除痛されている 不穏・苦悶が見られない |
血圧・脈拍 | 手術前のベースラインに近い 許容範囲内に安定している |
まとめ
全身麻酔後の抜管は、呼吸・循環・意識の回復をしっかり確認した上で、安全に行う必要がある重要なプロセスです。
これらのポイントを押さえておきましょう!
新人看護師さんにとっては、流れをつかむのが最初のハードル。
患者さんの回復段階を見極めながら、冷静にサポートすることが求められます。
繰り返し読んで、現場でのイメージトレーニングにも活用してください。
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