5分でわかる!術中バイタル管理【体温編】低体温の原因とシバリング対策

5分でわかるシリーズ!

手術中体温をちゃんと見てる?

体温管理の重要性について5分間で解説します!!

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なぜ体温モニタリングが必要なの?

手術中に体温をモニタリングする目的は、重篤な合併症を早期に発見し、予防するためです。

重篤な異常の早期発見

  • 悪性高熱症や感染の兆候は、体温の上昇から始まることが多い
    → 持続的な体温測定で、いち早く変化に気づける

低体温によるリスクの予防

  • 麻酔・室温・冷たい輸液により体温が低下しやすい
    → 適切な管理で、感染や出血などの合併症を防げる

手術中の体温はどこで測る?

中枢体温を測るのが原則

皮膚ではなく「体の深部の温度」を測ることで、正確に状態を把握できます。

測定部位正常値目安特徴注意点
食道温36.0〜37.5℃大動脈近く反応が早い胃まで入れすぎない(30〜40cm)
鼻咽頭温36.0〜37.5℃非侵襲で使いやすい酸素流量が高いと数値低下あり
直腸温36.5〜37.5℃安定して長時間測定できる変化が遅い
排便で誤差あり
膀胱温36.0〜37.5℃膀胱留置カテーテル使用で簡単尿量少ないと不正確
肺動脈温約37.0℃最も正確スワンガンツカテーテルで測定
高侵襲:一部手術のみ使用

※正常値は患者の年齢や状態によって若干異なるため、あくまで目安として使用します。

周術期に起こる低体温の原因とそのリスク

低体温とは

  • 深部体温が35℃未満の状態を指します。

主な原因

  • 麻酔薬の作用
    血管拡張・代謝抑制・体温調節機能の鈍化
  • 手術環境
    開腹・開胸で熱が逃げる/室温が低い
  • 冷たい輸液・輸血
    直接体内の熱を奪う
  • 再分布性低体温
    体内の熱が中枢→末梢に拡散する現象(特に麻酔導入直後)

低体温によるリスクと合併症

合併症内容
感染リスク上昇免疫機能が低下し、創部感染が起きやすくなる
凝固異常出血しやすくなる(凝固酵素の働きが低下)
覚醒遅延麻酔薬の代謝が遅れ、覚醒が遅れる
心血管リスク心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上昇
シバリング後述する筋収縮による震えで酸素消費UP・心負担増加

全身麻酔中の体温変化は「三相性」

  1. 第1相(麻酔導入〜1時間)
    → 血管拡張により熱が中枢から末梢へ
    → 急激な体温低下
  2. 第2相(術中)
    → 体外への熱放散+熱産生の低下
    → 徐々に低体温が進行
  3. 第3相(体温が34.5℃付近)
    → 自律性体温調節が回復
    → 血管収縮が始まり、体温低下が停止傾向に

特に「最初の1時間」が一番体温が下がりやすい!

周術期におけるシバリングとは?そのリスク

シバリングの正体

体が寒さを感じた時に、骨格筋が小刻みに震えて熱を作る防御反応
麻酔後の「平熱なのに震える」ケースも、体温調節機能のズレが原因です。

なぜ麻酔後にシバリングが起きやすいの?

✔︎ 麻酔で体温調節機能がゆるむ

麻酔薬には、体温を一定に保つ働きを鈍らせる作用があります。
この影響で、寒さを感じて震え始めるライン(=シバリングの閾値)がズレるんです。

✔︎ 術中に体温が下がっている

麻酔中は、血管が広がることで体の熱が中枢(体の中心)から末梢(手足)へ逃げてしまい、深部体温(中枢温)はじわじわと下がります。

✔︎ 術後に“体温調節スイッチ”が再起動!

手術が終わり、麻酔が切れてくると、抑えられていた自律神経が回復
体温調節が再び動き出しますが…

体はまだ「正常な体温でも“寒い”と感じてしまう」
その結果、震えて熱を作ろうとする反応(=シバリング)が起こるんです!

✔︎ レミフェンタニル(麻薬性鎮痛薬)の影響も

レミフェンタニルを使用していた場合は、投与を中止した直後に「リバウンドシバリング」が起こることもよくあります。
これは、薬が急に切れて体が反応過剰になるためです。

予防には、「手術終了前から患者を温めておく」ことがとても有効!


シバリングが身体に与える影響

影響内容
酸素消費量の増大震えにより通常の4〜6倍の酸素が必要になる
心負担の増加血圧・脈拍が上昇し、心疾患リスクが高まる
疼痛の悪化筋肉の収縮により術創部の疼痛が強く感じられることも
創傷治癒の遅延酸素が足りないことで、組織修復が進みにくくなる
術後せん妄のリスク上昇特に高齢者では、術後せん妄の原因に

シバリングの予防と看護

予防方法

  • プレウォーミング(術前の末梢加温)
  • 術中からの持続的な体温モニタリング
  • 輸液・室温の温度管理
  • 必要に応じてベアハガーや加温シートを使用

発生時の対応

  • 温風加温器・毛布などで保温強化
  • 薬剤の使用
     └ ペチジン(第一選択)
     └ マグネシウム・ブスコパン・デクスメデトミジンなど
  • 静かな環境・声かけで不安を軽減

高体温にも注意!見逃してはいけないリスクとは?

高体温は何度から?

一般的に、中枢体温が38.0℃以上になると「高体温」とされ、注意が必要です。
周術期に体温が急激に上昇する場合は、悪性高熱症や感染症、薬剤性発熱などの可能性があります。

高体温の主な原因

原因内容                  
性高熱症詳しくはこちらの記事で!
感染術後感染や敗血症などによる発熱。
徐々に上がることが多い。
薬剤性麻酔薬・抗生物質などに対する過敏反応で発熱することがある。
加温しすぎ(うつ熱)温風加温器や保温が過剰になり、熱が逃げずに体温が上昇してしまう。

高体温によるリスク

  • 脳や心臓への負担増加
    代謝亢進により酸素需要が増し、臓器に負担がかかります
  • 神経障害の可能性
    特に38.5℃を超えると、術後せん妄やけいれんなどのリスクが上がります
  • 悪性高熱症の場合は命に関わる
    早期発見・対応が鍵になります

高体温時の対応

  • 持続的モニタリングで早期発見(15分で急上昇していないかチェック)
  • 原因に応じた対応
    └ うつ熱なら加温の中止・室温調整
    感染や薬剤性が疑われる場合は医師に報告し、検査や薬剤の見直しを行う
    悪性高熱症なら迅速なダントロレン投与が必要

まとめ|術中の体温管理は、患者予後を左右する重要なケア!

手術中の体温管理は、予後に直結する重要な看護スキルです。
体温のモニタリングによって、悪性高熱症・低体温・感染症などの兆候を早期に発見・対応することができます。

✔ 術中体温管理で押さえておきたいポイント

  • 中枢体温をモニタリング(食道温・鼻咽頭温などが推奨)
  • 低体温を防ぐことで、出血・感染・覚醒遅延・シバリングなどの合併症を予防
  • 高体温にも注意し、悪性高熱や感染兆候を見逃さない
  • シバリングは見た目以上に重篤な影響あり。予防と早期対応がカギ
  • プレウォーミングや温風加温器の活用で、術前から体温を守る意識を

体温の変化は数値だけでなく患者の全身状態と合わせて判断し、
「いつもより冷たい?」「ちょっと震えてる?」など、“看護師の気づき”が命を守る大きな力になります。

日々の観察とケアを通して、より安全な手術のサポートをめざしていきましょう!

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