5分でわかる!【カプノメーターとは①】挿管後見てる?正常・異常波形について解説

5分でわかるシリーズ!

カプノメーターとは?仕組みと測定原理を簡単解説

カプノメーターとは

呼気の中にある二酸化炭素(CO2)をリアルタイムで測る機械のこと。
全身麻酔をかけたときに、呼吸がちゃんとできているか確認するのに使います。

呼気のCO2が赤外線を吸収する特性を使って濃度を測り、ETCO2(呼気の終わりのCO2の値)として数字で表示します。
そして、時間ごとのCO2の変化をグラフにしたものを「カプノグラム」といいます。

  • カプノメーターは、機械のこと!
  • カプノグラムは、その機械が出すCO2の波形のこと!
  • ETCO₂とPETCO₂はほぼ同じものと考えてOKです。

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挿管後にカプノグラムで確認すべき理由

  • 正しい気管挿管の確認
    → 食道に誤挿管していないかをすぐに判断できる
  • 呼吸状態のリアルタイム監視
    → 呼吸停止や換気不良の早期発見に役立つ
  • 気道のトラブル検出
    → 気道閉塞やチューブの閉塞を察知できる
  • 患者の安全確保
    → 呼吸や挿管の異常をすぐに見つけて患者を守る!

正常なカプノグラムとETCO2の基準値とは?

正常なカプノグラムは4つのフェーズ(位相)で構成されます。呼吸の流れに伴ってCO2濃度が変化し、下記のような特徴的な波形を示します。

位相どんなとき?波形の意味・特徴
第Ⅰ相
(基底相)
息を吸ったとき・吐き始めCO₂がない空気。
波形はゼロ(平ら)
第Ⅱ相
(上昇相)
肺の奥から空気が出始めたときCO₂が出てきて波形がグッと上がる
第Ⅲ相
(プラトー相)
肺から安定して空気が出ているとき最もCO₂が多い。
波形は平らに近い
第Ⅳ相
(吸気相)
また息を吸い始めたときCO₂がゼロに戻る
波形がストンと下がる

ETCO₂(呼気終末二酸化炭素濃度)とは
第Ⅲ相の終わりの値で、35~45 mmHgが正常です。

こんなカプノグラムは要注意!異常波形パターンとトラブルサイン

異常パターンETCO₂の値主な原因対応方法
波形が出ない
(平坦)
0 mmHg・食道挿管
・回路外れ
・モニター不良
・ECMO装着時
・人工心肺時
挿管位置確認
→必要時再挿管
回路確認
サンプリングチューブ確認
第Ⅲ相消失急激に低下 or 0・回路外れ
・挿管チューブのカフリーク
・心停止
・回路確認
・カフ追加
・バイタルサイン確認
・再挿管
・心臓マッサージ
第Ⅲ相が緩やかに低下徐々に低下・抜管後の呼吸低下
・麻酔薬残存
・換気の補助
・呼吸状態の観察
・麻酔薬の拮抗
第Ⅱ相が緩やかに上昇徐々に上昇・呼気抵抗がある
・挿管チューブが閉塞傾向
・気管狭窄
・COPDの人は傾きがある
・挿管チューブ内の吸引
・気管内吸引
・喘息発作の有無確認
・血ガス
波形に凹みがある
ギザギザ
波形はあるが乱れあり・自発呼吸の混在・筋弛緩の追加
・換気モードの見直し
基線の上昇変化なし・ソーダライムの消耗
・呼気弁の異常
・ソーダライムの交換
・点検
ETCO₂が高すぎる>45 mmHg・換気不足
・COPD
・CO₂吸収過多
・代謝亢進
(発熱,シバリング,痛み、痙攣)
・換気量増加
・原因除去
ETCO₂が低すぎる<35 mmHg・過換気
・肺塞栓
・出血
・心停止
・代謝低下
(低体温、麻酔の使用等)
・換気の見直し
・循環評価
・原因精査

PaCO₂とPETCO₂の関係 

用語のおさらい

用語意味測定方法正常値
PaCO₂
(動脈血二酸化炭素分圧)
動脈血中の
二酸化炭素の分圧
動脈血ガスで測定35〜45mmHg
PETCO₂
(呼気終末二酸化炭素分圧)
呼気の最後に出る
CO₂の分圧
呼気ガスの測定
(カプノメーター)
30〜43 mmHg

健康な人のPaCO₂とPETCO₂の関係

PaCO₂ ≒ PETCO₂ + 10mmHg(挿管下)

呼気の最後に吐き出されたCO₂(PETCO₂)が、動脈血中のCO₂(PaCO₂)よりわずかに低い。

カプノメーターを見ることで、
血ガス測定せず、PaCO2予測できるということ!

なぜPETCO₂がPaCO₂より低い?

健康な人でも、肺の中にはガス交換がほとんど行われない「生理的死腔(=換気されるが血流が少ない部位)」があります。そのため、呼気の中のCO₂濃度(PETCO₂)は、血液中(PaCO₂)よりも少し低くなります。

PETCO₂はPaCO₂の代用にはなるけど、少し低いことを知っておこう!

まとめ

カプノメーターは全身麻酔中の挿管確認や呼吸管理に必須のモニターです。

  • カプノメーターは装置、カプノグラムは波形と覚え、
  • 挿管後は必ずカプノグラムで正確な気管挿管を確認し、
  • 正常波形とETCO2値(35〜45 mmHg)を押さえ、
  • 異常なカプノグラム波形を見逃さないことが患者安全の鍵となります。

おまけ【PETCO2値や波形の異常を発見したら】

手術中に「いつもよりPETCO₂が低いな」
「波形が小さい・変だな」と感じたら、
まずは“変化に気づけた”自分を褒めてOK!
そこから一つひとつ、順を追って対応していきましょう。

①まずは器械トラブルを疑おう!

PETCO₂が急に下がったり波形がおかしい時、いちばん多い原因は機械や回路のトラブルです。
まずはこれをチェック!

  • 気管チューブが浅くないか?(抜けかかっていないか)
  • 回路の接続部に漏れや緩みはないか?
  • 回路が折れ曲がっていないか、閉塞していないか?
  • 回路内に水や分泌物が溜まっていないか?
  • 呼吸器の設定が変わっていないか?

機械の問題があれば、まずそこを直しましょう。
簡単なトラブル潰しが基本です。

② 器械に問題なければ、患者さん側の問題を考える

次に、PETCO₂が下がった理由を患者さんの体の状態から考えます。

  • SpO₂も徐々に下がってきている?
  • 血圧が下がったり、頻脈など循環に変化はない?
  • 手術中に体位を変えた後や何かイベントがあった?

こうした状況なら、「肺のガス交換がうまくいっていないかも」と予測しましょう。

血ガスを取っていなくても、「今この患者は何が起きているのか?」を予測する力が大事!

③血ガスを測ってPaCO₂を確認する

モニターだけではわからない時は、やっぱり血液ガス分析をします。
そこで、

  • PaCO₂は高い?
  • PaCO₂とPETCO₂の差は?
  • PaO₂は正常?

が正確にわかります。

酸素化の状態も一緒にチェックできるので重要です。

④PaCO₂とPETCO₂の差が大きい=ガス交換異常のサイン

健康な状態では、
PaCO₂ ≒ PETCO₂ + 5~10 mmHg

ですが、この差が10mmHg以上に広がると…


考えられる病態

病態状態どうなるか?
死腔の増加換気はされているが血流が少ない肺でCO₂をうまく排出できず、PETCO₂が下がる(差が開く)
V/Qミスマッチ換気と血流のバランスが悪いCO₂もO₂もうまく交換できず、SpO₂やPaO₂も下がることが多い

つまり・・・
ガス交換がうまくいっていない
CO₂が体外へ排出しきれていない or うまく反映されていない
という危険なサインです!

⑤指標と病態のつながりを見て、原因を予測しよう!

指標正常値異常があると…考えられる病態
PaCO₂
(動脈血二酸化炭素分圧)
35〜45 mmHg上昇
(高CO₂血症)
換気不全
(例:無気肺, 気胸, 心拍出量低下
PETCO₂
(呼気終末二酸化炭素分圧)
30〜43 mmHg低下死腔増加、
V/Qミスマッチ
(例:肺塞栓, 無気肺, 気胸, 心拍出量低下
PaO₂
(動脈酸素分圧)
約80〜100 mmHg低下酸素取り込み不良
(例:無気肺, 肺塞栓, 気胸
SpO₂
(経皮酸素飽和度)
96〜100%低下酸素化不良
(例:無気肺, 肺塞栓, 気胸

病態別に見たモニターの異常の傾向

病態PaCO₂PETCO₂PaO₂/SpO₂補足
無気肺
〜変化なし
換気ができずCO₂排出困難
酸素も取り込めない
肺塞栓→ または ↑換気はあるが血流が止まり、
ガス交換できない
心拍出量低下血流不足により肺循環も低下、
ガス交換効率低下
気胸肺が虚脱し換気不能、
ガス交換不良

⑥ 状況別のよくある原因と対応例

病態よくある場面対応のポイント
無気肺体位変換後
長時間臥位
胸郭展開不良
吸引
PEEP調整
肺塞栓長時間手術
血栓リスクあり
呼吸循環サポート
心拍出量低下出血
循環虚脱
補液
昇圧薬
循環管理
気胸手術操作による損傷胸腔ドレーン挿入など

実際の対応の流れ(まとめ)

  • PETCO₂低下・波形異常などの“見える異常”を発見
  • 回路・チューブ・センサーなどの器械的トラブルを確認
  • 異常が続けば、血ガスでPaCO₂・PaO₂をチェック
  • PaCO₂とPETCO₂の差や、PaO₂・SpO₂の状態を総合判断
  • 原因(換気?血流?)を予測し、対処へつなげる

【最後に:VQミスマッチって何?】

  • V/Q=換気(Ventilation)/血流(Perfusion)の比率

肺胞にどれだけ空気が届き、どれだけ血液が流れているかのバランスを示す指標
バランスが崩れることを「VQミスマッチ」と呼ぶ

手術室でよくあるV/Qミスマッチの例

  • 肺の一部がしぼんで換気されていないけど血流はある(無気肺)
  • 血流が止まっているけど換気はある(肺塞栓)
  • 気管チューブの位置ずれで片肺換気になっている
  • 肺水腫やARDSで換気不良が起きている

臨床で役立つポイント

例えば:PETCO₂の低下、SpO₂の低下、PaCO₂の上昇などの異常は、一つひとつがバラバラに見えます。
でも、「V/Qミスマッチ」という“共通の仕組み”を知っていれば、バラバラの異常が一本の線でつながるようになります。

例:PETCO₂が下がってSpO₂も低い…何が起きてる?

「PETCO₂が急に下がった…SpO₂も少しずつ低下してきた…」

→ このとき、「あ、もしかしてVQミスマッチが起きてるのかも」と分かれば、

  • 換気の問題?(無気肺・気胸?)
  • 血流の問題?(肺塞栓?循環虚脱?)

というように、原因を絞って、すばやく動けるようになります。

モニターや血ガスデータの“見え方”が変わる!

V/Qミスマッチを知っておくことで、

  • PETCO₂やPaCO₂の差を見る意味
  • SpO₂が下がる理由
  • 呼吸器や循環トラブルと結びつけた考察

ができるようになります。

つまり、ただ数値を見るだけじゃなくて、
“何が起きてるか”を自分の頭でイメージできる看護師になる、ということ。

見えているモニターやデータから、
背景にある病態を予測して、
適切な対応へつなげる力を持つ!

この力こそが、手術室看護師に求められる視点です!

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